高野街道(99) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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高野街道(99)


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-ゆう1


学文路までもどってきました。「かむろ大師」へ向かう前に・・・


学文路郵便局前「境界石」

学文路郵便局前に、花崗岩で作られた国境石が据えられ、磨かれた碑面には、次の銘文が刻まれています。

(正面)定杭 是ヨリ 北興山寺領

(背面)是ヨリ 南御国領

この石は、高さ91cm、幅18.5cm、奥行き17.5cmの方形柱状です。学文路の民家の排水溝の石垣に、この国境石が積まれているのを発見し、現在のこの地に移され、大切に保存されています。残念なことに、もと建っていた場所・掘り出した年月の伝承がなく、謎に包まれています。藩領と寺領の国境を標示する石が、現在確認されているのは、この一基だけです。国境・村(大字)の境は曖昧であったものが、秀吉の検地によって不動の境界が確定しました。寺領は、天正19年(1591)から、藩領は、慶長6年(1601)に検地を実施しています。その結果、藩領は三十七万石、寺領は二万一千石の知行地となりました。したがって、国境石が建ったのは、慶長6年以後のことです。銘文に、「御国領」と敬語を使っていることから、高野山が建てたことに間違いありません。何と言っても御三家の南紀徳川氏相手です。建てる位置の了解も得たものと思われます。室町時代頃から高野山では「学侶・行人・修理」の三派に寺院が分かれ、それぞれの派で、知行地を支配し、年貢を取り立てていました。行人派は興山寺(現金剛峯寺)を本山として約一万石の村を支配していました。九度山・河根の二ヵ村は、この派に所属し、馬場村より東の寺領の村々もこの派に所属しています。興山寺領の村々を「総分」とも呼びます。町内の残る寺領の村々は、学侶と修理領です。これら寺領の中に飛び石のように入郷、丹生川そして学文路の三ヵ村は、紀伊藩領です。この三ヵ村はすべて興山寺領の村と境が接しています。銘文の「定杭」は、基準点となる杭を表しています。国と村の基準点の杭ですから、幹線道路に建てるのが普通です。ここでは当然高野山参詣道路となります。三軒茶屋から慈尊院へ通じる河南大和街道の東西線と、高野山への南北の登山道路のどちらかに建っていたはずです。国境石は境を示すだけでなく、道標をも兼ねていたと考えられます。高野巡礼者に、この地点から国が異なることを注意させるものでもあったのです。紀の川に面している寺領の各村の絵図には、川の真ん中を境に描いています。当然のことです。ところが紀伊藩は、「寺領の村は川の真ん中は境がなく、川岸が国境である」と一方的に決めていました。九度山・慈尊院は、紀の川の川原から石砂を採取することができませんでしたが、隣村の入郷は藩領ですから、村内の川原は領地として自由に利用できました。ごり押しが罷り通る藩のおごりというべきでしょう。明治2年寺領が堺県に編入されたとき、藩の不合理が咎められ、川の中央が境界となりました。舟の運航も自由になり、藩領の村々と平等な権利を得るようになったのです。


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そして、もどって国道に出ますと、その角の「三里石」には、次のように刻まれています。

慈尊院みち是より一里

高野みち女人堂迄三里


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「かむろ大師」への坂道をひたすら登りますと、まず「平和神社」がありました。


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かむろ大師

1910年(明治43年)開祖尊海上人により開創された「かむろ大師」。当初は旧高野街道に面した町中にあり、その門前脇にある物狂地蔵尊の前には弘法大師が高野山と各地を行き来された際に休まれたと伝えられる「腰掛け石」が残されています。また、開創時より行われている御祈祷(水加持)のご利益を求めて、尊海上人が入滅された今も近在近郷はじめ全国から参詣者が訪れています。隣接する奥之院の一部は「平和公園」として一般の方々にも開放され、親しまれています。1989年(平成元年)参詣者の増加と旧本堂の老朽化に伴い、5年の歳月をかけて現在の地に建立。現在では「学文路」の文字にちなんで合格祈願の参詣者も増えているそうです。本堂では開祖尊海上人のご誓願により「無休加持」として毎日ご祈祷が行われています。境内地にある御神水汲み場。ご利益を求めご祈祷を受けられた方が持ち帰る御神水の給水場です。雄大な紀の川や橋本市の中心地を一望。朝夕の景色の美しさは「和歌山県朝日夕日百景」にも選ばれています。


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気持ちの良い眺めです。ゆっくりと下りながら、大阪へともどります。