くすっり(2)
こんなブログを書き始めたものだから、歯痛になって薬を飲まなければならなくなって、うれしいやら痛いやら・・・
■くすりとほほえむ元気の素レトロなお薬袋のデザイン(光村推古書院)/著:高橋善丸
明治から昭和にかけて作られた配置薬の薬袋。そのレトロなデザインがなんとも魅力的。「くすり」と笑いながら楽しく読める一冊。グラフィックデザイナーの著者は、家庭配置薬を中心とした薬のパッケージを5000点以上コレクションしているという。その膨大なコレクションをカテゴリー別に美しく並べ、解説した本。
病院や薬局が身近になかった時代、体の不調は配置薬が頼りだった。字の読めない人もまだ多く、何の薬であるか絵を見てすぐわかることが必要であった。突然の苦しみに見舞われた時、パッケージを見て服用する薬を選んでいたのである。そのため各社パッケージに工夫を凝らし、自社製品をアピールしていった。当初、いかに苦しさに共鳴する絵が書かれているかが重要だったデザインも、時代と共に変化していく。症状と効能を表していた絵柄が、戦後は爽快な女性の笑顔に変わったのである。例えば、咳止め薬では、紳士たちが苦しそうに咳き込んでいる姿から、なぜか笑顔で咳をする女性、そして全快したのか爽快な笑顔を見せる女性へと変わってきている。また、カテゴリーごとの絵柄のテーマがあまりにもよく似ている。胃薬は大抵、位置が怪しげな内臓をあらわにした「はらわた紳士たち」が勢ぞろいしている。ケロリンをはじめとする頭痛薬は、各社紳士・淑女がペアで苦悩の表情を見せていたのが、戦後はどこも二人揃って爽快な笑顔を見せている。なぜか各社、前例を踏襲し続けているのである。そこには、「信頼」を重視する薬業界において、変わらないことへの安心感があるのだろう。大衆に浸透している商品は、むやみにデザインを変えてはいけないのである。薬はかつて非常に高価だったので、見た目にもその価値を感じさせるよう過剰な装飾を施していることもあった。そのため、ロココ調装飾のデザイン、中国四千年の歴史や漢方薬をイメージしたもの等様々に工夫を凝らしている。「高価だから効くだろう」という思いこみによる心理作用・プラシーボ効果も期待できよう。ネーミングもストレートなもの、ひねったもの、「上手い!」と思うものなどバラエティにとんでいて笑える。レイアウトも美しく、楽しく眺めることができる。また、説明やコラムもおもしろく、本当に「くすり」と笑えるいい本だ。
●高橋善丸
グラフィックデザイナー、大阪芸術大学大学院客員教授、株式会社広告丸主宰、日本グラフィックデザイナー協会会員、日本タイポグラフィ協会会員、東京タイプディレクターズクラブ会員、ニューヨークタイプディレクターズクラブ会員。グラフィックデザインはそれ自体、時代を語る文化であるということを表現の礎に、湿度ある視覚コミュニケーション表現を探求している。ニューヨークADC銀賞、ニューヨークフェスティバル銅賞、ほか国内外の受賞多数。
薬の袋を「やくたい」と呼ぶわけですが、中に入っている薬を包む紙は「やくほうし」と言います。めったに風邪をひかない私ではありますが・・・ひいたかな?と思ったら「改源」です。これで、大概はなおってしまいます。