自由の女神について(6)
■巨乳すぎるという理由で女神像が市庁舎から撤去=フランス
仏北部ヌービルアンフェラン(Neuville-en-Ferrain)で、市庁舎に飾られていたフランス共和国を象徴する自由の女神マリアンヌの胸像が、市長命令で撤去されることになりました。「胸が大きすぎる」との理由だということです。このマリアンヌ像は、地元出身の美術家カトリーヌ・ラマック(Catherine Lamacque)さんが、仏人モデルのレティシア・カスタ(Laetitia Casta)さんをイメージして制作したもので、2007年に市が1400ユーロ(約16万8000円)で購入し、市庁舎内に飾られていました。だが、ジェラール・コルドン(Gerard Cordon)市長は議会を説得し、今年度予算にこの像に代わる「保守的なマリアンヌ像」の購入費900ユーロ(約10万8000円)を計上しました。市職員が匿名でAFP記者に語ったところによると、問題の像は「結婚式で引き合いに出されるなど、市民の間でゴシップの種になっていた」ということです。困惑しているのが、制作者のラマックさん。マリアンヌ像の胸が豊満なのは意図的なデザインで、「フランス共和国の寛容を象徴するため」だと主張しています。「もう何年も市長の目の前にあったものなのに。しかも、複数のデザインの中からあれを選んだのは市長自身なんですよ」「撤去決定は、あまりにも唐突」と話すラマックさんは、胸像が壊されないことだけを願っているという。市職員の中にも、胸像撤去を残念に思っている人もいます。やはり匿名で取材に応じたある職員は「決定は合意ではなく、市長単独によるものだ」と納得がいかない様子。ラマックさんのマリアンヌ像を「独特な個性ある作品」と評価し、「マリアンヌは母性の象徴でもある」と大きな胸への理解を示していました。
■マリアンヌ(Marianne)
フランス共和国を象徴する女性像、もしくはフランス共和国の擬人化されたイメージです。自由の女神として知られています。フランス革命の際にサン・キュロットの象徴とされたフリジア帽と呼ばれる帽子をかぶっています。フランスのユーロ硬貨・切手・国璽などに描かれたり、庁舎などの公的施設にその彫像が設置されるなどして、共和制及び自由の象徴として国民に親しまれています。フランスは正式な国章を有していませんが、フランスではマリアンヌの肖像がこれに準ずるものとして位置づけられています。フランス政府は1999年から、マリアンヌと三色旗をデザインしたロゴマークを政府公報などに使用しています。なお、マリアンヌのほかに雄鶏をフランスの象徴とすることもあります。世界の黎明を告げる啓蒙主義の伝統を具象化したものです。
■レピュブリック広場のマリアンヌ像
パリで行われるデモや抗議運動の多くが、この広場をスタート地点にして行われます。共和国の理念を象徴している彼女にとって、一番ふさわしい場所かもしれません。台座にはフランス人民とその時々の権力者との戦いの歴史が記されたレリーフが刻まれています。
マリアンヌは、フランス革命期に、自由のシンボルとして、フランス共和国を象徴するマスコットとして認められました。ポピュラーなファーストネームである「マリー・アンヌ」からつくられた名前だそうです。その後、マリアンヌは皮肉を込めて使われることもありましたが、19世紀末からフランスの象徴として広く普及するようになりました。20世紀になると、役場や学校が次々に、マリアンヌ像を飾るようになりました。現在では、マリアンヌ像はフリギア帽を被るのが正式とされていますが、顔には制限がないようです。これまでに、実在の女性としては6人がマリアンヌのモデルに選ばれています。ちなみに、役場が注文したマリアンヌ像のモデルで、最もよく売れたのは、映画俳優のカトリーヌ・ドヌーブとブリジット・バルドーだそうです。
ブリジット・バルドー(女優 1970年~1978年)
ミレイユ・マチュー(歌手 1978年~1985年)
カトリーヌ・ドヌーヴ(女優 1985年~1989年)
イネス・ド・ラ・フレサンジュ(ファッションモデル 1989年~2000年)
レティシア・カスタ(ファッションモデル 2000年~2003年)
エヴリーヌ・トマ(歌手 2003年~)