ドーム・チェア(3)
■エーロ・アールニオ/フィンランド
●リングチェア
●ボールチェア
アールニオがフリーランスとして活動するようになって初めて発表した作品。デビュー作であると同時に、もっとも有名な作品となっています。丸い球の一部を切り取ったような形状で、内側は全て革張り。そこにクッションが置かれていて、座ると体が包み込まれるような感覚を味わうことができます。また、周囲の音が遮断されるようになっているので、個人の空間として楽しめるようなつくりになっているのも特徴です。近未来的なデザインが大きな話題を呼んだボールチェアは、映画『2001年宇宙の旅』に登場したことでも有名。その先進的なデザインに魅了された人は多く、当時のフィンランド大統領、モナコのグレース王妃、イヴ・サンローラン、フランク・シナトラといったビッグネームも愛用したといわれています。
●バブルチェア
「ボールチェアにもっと光を彩り入れることができないだろうか」という発想から作られた。アクリル樹脂を熱によって膨らませ、スチール製のフレームを取りつけ、中にクッションをセットするというシンプルなつくりになっています。使うときは天井から吊り下げて、ブランコの要領で座ります。ボールチェアと同様、包み込まれるような座り心地で、名前のとおり泡の中にいるような独特の浮遊感を味わえるのが特徴です。
●ハーフドームチェア
●パスティルチェア
「ボールチェア」と並んでアールニオの代表作といわれている。この作品は1968年に、アメリカの工業デザイン賞である「A.I.D賞」を受賞したことでも知られています。パスティルとは錠剤という意味で、トローチの形にヒントを得て、この名前がつけられました。カラフルな色合いのパスティルチェアは、加工した2枚のFRPを張り合わせて作られたもの。底面に丸みをもたせているので、座ると前後に揺れる感覚を味わうことができます。座った感触はゆったりとしていて心地よく、当時の『The New York Times』誌には「人間の体をもっとも快適に包み込んでくれる椅子」として紹介されました。また、アウトドアで使えるのも大きな特徴。中が空洞になっているので水に浮かべて座ることもできますし、雪の上ではソリのようにすべらせて楽しむこともできます。普通の椅子では考えられないこういった使い方は、丈夫で耐水性のあるFRPを用いたパスティルチェアならではの楽しみ方といえるでしょう。