あはっ(63) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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ドーム・チェア(1)


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この写真を発見した時、ドーム・チェアだと直感しました。実際には・・・

■サークルチェア/ハンス・J・ウェグナー

この椅子はオブジェのような椅子です。フラッグハリヤード1本を切らずに編み込んであります。このロープと木地がマッチングして、夢のある椅子に仕上がっています。


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PPモブラー

デンマークのみならず、世界中から”熟練の名工集団”として熱い視線が注がれるPPモブラーは、1953年に家具職人のアイナー・ペダーセンの兄弟により設立されました。それから半世紀を過ぎた今、PPモグラーは創業当時から変わらぬ職人気質を頑なに守りながら、デンマークを代表する家具工房として名声を保ち続けています。現在は、高齢の初代社長アイナー・ペダーセンから工房を引き継いだ息子のソーレン・ペダーセンが同社の輝かしい歩みを引き継いでいます。昔も今も、工房で働く職人達は極めて小規模ですが、その品質の高さと崇高なまでに貫かれたクラフトマンシップに見せられ、地元デンマークだけではなく、世界各地から入社を希望し門を叩く職人の卵があとを絶えません。物づくりを取り巻く環境に置いてどんな機械化が進んでも、この工房だけは手仕事がもたらす技や情熱を忘れないでいます。今、工房は世界的に知られるようになり、日本やアメリカをはじめ、各国マーケット向けに家具を生産しています。


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その名が知られるきっかけとなったのは、言うまでもなく、あの「ウェグナーの家具を作る工房」だったのです。「ザ・チェア」の名称で知られるウェグナーの名作イスは、まさにPPモブラー社の小さな工房から生み出された物です。元来優れた木工職人を輩出しているデンマークにおいて、優れた家具工房を探すのはたやすい。その中で、ウェグナーが自分の作品の中でも特別に椅子を任せるためにPPモブラー社を選んだのには理由があります。それは、工房が常に高い技術を持つだけではなく、革新的なデザインにも理解を示してきたからです。最初に製作されてから半世紀ほどを経たものであっても、ハンス・J・ウェグナーの椅子に今も新しさを感じます。ウェグナーが家具デザインにおいて最も重要視するのは、「スタイル」でも「トレンド」でもありませんでした。彼が追求したのは、物事は限りなく純粋で自然であればこそ美しいものとなる、という考え方でした。その一方で革命的にまで機能性を追求することも忘れませんでした。そのスタイルは、まさに今日のスカンジナビアン・デザインの魅力とされる点を見事に体現しています。伝統的な家具製作、職人気質、手仕事に背を向けることなく、一貫したテーマに沿って既存の家具をリ・デザインしてきたウェグナーとPPモブラーのコラボレーション。それゆえ、両者が生み出してきた作品は、変化し続ける世の中の要求に遅れることなく、むしろ、時、空間、世代を越え、デザイン的にも技術的にも、今日の家具を発展させる役割を担ってきたのです。

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PPモブラーの工房はウェグナーの自邸にほど近いところにあります。ウェグナーは何かアイデアが浮かぶと、真夜中であろうと休日であろうとこの住宅街にある白い壁の工房に不意に現れたといいます。そして自ら木と格闘してみたり、盟友とも言うべきマイスター、アイナー・ペダーセンと対話を続けたそうです。そんなウェグナーのために、PPモブラーでは彼に工房の鍵を渡し、いつでも自由にやってきてモデルを作ったり、プロトタイプを作ることを許可していました。互いに敬意を払いながら高い技術に対する情熱を示し続けた、ウェグナーとPPモブラーの特別な関係を物語るエピソードです。そしてウェグナーが家具を語る時、しきりと口にしたのが「椅子は人が座るまでは、椅子ではない」という言葉です。彼の作品はあくまで人々が日常の生活で使うために作られたものです。日常生活の道具としての家具に対する深い理解があるからこそ、彼のデザインは機能(使い勝手)や快適さを献身的なまでに追求し、その結果、日常の家具であると同時に、芸術作品として評価を得るまでになったのです。彼の作品は実用的で使いやすい。つまり、彼は「美しさ」と「機能性」という相反する世界にある立ちはだかる垣根を取り払うことに成功したのです。


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スカンジナビア家具の特徴としてよく挙げられるのは、シンプルさと機能性である。そのデザインと技術は、木を愛する国デンマークのよき伝統に基づいていると言えます。デンマークの家具の材料に用いられるのは、豊かな森で120-180年育った美しく丈夫な木です。ハンス・J・ウェグナーは家具を作るにあたり、ビーチ、アッシュ、オーク、メープル、パインなど、地元に産する木を使用することを好んでいました(マホガニーとチーク材のみデンマーク以外の原産)。そして彼にとってさらに重要なことは、目的=家具製作のために適切な木を見極めることでした。彼の出身地であるユトランド半島は木材の切り出しが盛んな土地であったから、自然と木を見る目が養われたのでしょう。一方、PPモブラーもまた木に対する思い入れの深さではウェグナーにひけをとりません。木を選ぶ際、PPモブラーでは必ず木の目利きを伴って森へ行くといいます。そして選び抜いた木が100年を生きてきたものなら、姿を変え椅子になっても、同じ年齢、それ以上を使える家具に作り上げたいと情熱を傾けました。「これと選んだ木を伐採し、製作するための表皮をはがした時、芽吹いてから100年を経てはじめて日にさらされた美しい肌を見るのは一番感激する瞬間です」とは、現在父を継いで代表取締役社長をつとめるソーレン・ペダーセンの言葉です。ある意味で愛情とも言えるメッセージが込められています。ウェグナーは完璧主義者です。


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2007年に他界した彼は、近年まで数多くの椅子とテーブルをデザインし続けてきました。そんな彼が印象的な言葉を残しています。「真面目になりすぎてはいけない。遊びを忘れてはならない。ただし遊ぶときは真剣に遊ばなければいけない」。そしてまた、こんな言葉も。「完成された椅子はありえない。本当にいい椅子は、永遠に仕上がらないのだ」と。老練のマイスター、アイナー・ペダーセンはいまだ健在です。そしてウェグナーの厳しさを知るソーレン・ペダーセン、コンピューターを導入し新たな伝統の担い手となる3代目カスパー・ペダーセン。PPモブラーのチャレンジはこれからも続きます。