茶室考(6)
■如庵は、杮(こけら)葺き入母屋風の妻を正面に向け千利休の待庵とも違った瀟洒な構え、二畳半台目の向切りの茶室。正面左側に袖壁を持つ土間庇を設け、右躙り口、正面控えの間(扈従の間)へのアプローチとする。躙り口入って左側奥に四尺の出床、その右手やや奥に勝手からの入り口。茶道口と給仕口を兼ねるこの勝手口からは給仕の動線に沿って斜行する壁を立て足元には三角形の板畳「鱗板(うろこいた)」を敷く。ナグリの床柱はそのチョウナの目痕に武家らしい剛直さを感じさせるが決して粗野ではない。勝手口から入ったところの台目畳が亭主座。横に道庫。床の間は亭主の右手後方に位置することになるが、出床にしたため距離的には離れない。亭主座の風炉先に中柱を立て板壁で仕切っている。中柱と板壁で風炉先にある相伴席の半畳を亭主畳と区切るとともに下部は丸く切り欠いて吹き通しにして相伴者の視線への配慮もぬかりない。鱗板とともに異例の構成であるが不合理性は感じられず、「利休七哲とは別格」といわれる有楽斎の並々ならぬ技量を示す。二畳の小間と違ってゆとりがありかつ緊張感を失わない室内空間は、「二畳半、一畳半は客を苦しめるに似たり」と言い切った如庵・有楽斎の面目躍如と言うべきだろう。
たったこれだけの解説だが、わからない言葉がいっぱいある。その一つ一つを丁寧に調べていくことにする。
■「杮(こけら)」の字と「柿(かき)」の字は非常に似ているが別字である。「杮(こけら)」は「こけらおとし」の「こけら」同様、木片・木屑の意味。「柿(かき)」は「木部五画(旁が「亠+巾」)」なのに対し、「杮(こけら)」は「木部四画(縦棒が繋がる)」である。
■こけらいた【▼杮板/▼鱗板】
屋根を葺(ふ)くのに用いる杉・椹(さわら)・檜(ひのき)などの薄い削り板。木瓦(こがわら)。木羽(こば)。木羽板。こけら。
■鱗板
角違いの茶室に見られる、三角形の板。
床の脇には斜めに壁が造られていて、これを「筋違いの囲い」という。足元の黒い三角の鱗板の部分が、給仕の通る道なのだそうです。
■千鳥板(鱗板)
・貴人清次の炉点前の時、千鳥帛紗を置く板。(玄々斎の創案)
・千鳥茶巾:お伴の茶碗に仕組む茶巾のたたみ方。
・杉材/サイズ:底辺10cm×高さ5cm (最も長い辺を底辺としています)
■だいめ(台目)
台目構えの茶室のこと。手前座の畳が台目畳(茶席用の畳) になっているもの。例えば 3畳台目は通常の畳 3枚と台目畳1枚で構成。台目畳とは通常の丸畳の4分の3の大きさの畳をいう。
SAV「天見窯」の新作・・・
側面の削りがユニークな新作。