きらっ(169) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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灰との出会い(8)


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■「灰汁」を使用する代表的な染色は「藍染め」です。

藍の染料である「すくも」の青色色素インジゴは、水には溶けませんが、アルカリ性の液には溶ける性質があります。それで、灰汁によってまずインジゴを抽出し、発酵させて布に染まるような物質(ロイコ化合物)に変化させます。液に漬けた布を、空気中で酸化させると、ロイコ化合物は再びインジゴに戻り、ブルーに発色します。

「紅花染め」でも、同じように”灰汁”のアルカリの力を借ります。紅花の色素には、黄色色素と、赤色色素があり、 黄色は水に溶けますが、赤色はアルカリでしか溶けません。そのため、まず水によくさらして、黄色色素を取り除き、その後、”灰汁”につけて、赤色色素を抽出します。そして、それをさらに酸(梅酢など)で中和してから、紅色を染めます。ほとんど、科学実験のような工程です。


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■また「灰汁」は色素を定着させるための、媒染剤としても、利用されます。これは、椿やひさかきなどの、枝葉にアルミニュウムを含む木灰を使うことによって、天然のアルミ媒染の効果をだすものです。


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■陶芸で釉薬を作るときに灰を利用します。しかし灰はアクをたっぷり含んでいるためにアクを抜いて使うことになります。アクは釉薬に縮れをもたらしたり、発色を鈍くしたり、いろいろな弊害があると言われています。アクを抜くには、篩でこした灰を大きめのポリバケツに入れて、そこに水を注ぐと、アクが灰から溶け出てきます。いかにも「はいじる=灰汁(アク)」という感じです。その灰汁を捨てて、新たに水を注ぎます。「灰汁を捨てては、水を注ぐ」を、繰り返して、灰汁(アク)を抜きます。釉薬の灰汁を抜かずに作業をすると、手がボロボロになりヒリヒリします。木や草の灰の灰汁はPH11以上の強いアルカリ。爪を溶かしてしまうのです。爪の先はペラペラになって、指先の指紋は溶けて消えてしまいます。やはり灰汁は抜いたほうがいいようですが、アクが強いのもおもしろいものです。


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■ものを燃やせば大抵のものは灰になります。とくに生命体である有機物を燃やせば灰が残ります。木や花や草など植物はもちろんのこと、魚や鳥、昆虫や爬虫類、動物や人間などの哺乳類も燃やせば骨と灰になり、骨もさらに高温で焼くと灰だけが残ります。この灰はすべて釉薬の原料になるのです。無機物でも火山灰、石灰など文字どおり灰とつけば釉薬の原料になります。


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■それぞれの灰の成分は微妙に異なり、その成分の違いが釉薬の色の違いや溶ける温度の違いとなってあらわれます。植物の灰を使った経験から言えば、木灰、草灰、わら灰、笹灰、もみ灰の順に溶けにくくなるようです。また木灰は緑や茶、草灰は草色、わらは白っぽく、笹やもみは黄色みを帯びた色になりがちですが、釉薬の他の成分や、やきものの土、焼き方によって一概には言えません。さらに同じ植物の灰でも成長のどの段階の灰か、どんな土壌に育ったかによっても灰の成分が違ってきて発色が違うようです。


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■灰汁はなにも灰から出るだけではありません。いろいろな物から灰汁は出ます。やきもので言えば、粘土がそうです。掘ってきた粘土をそのままロクロで使うと、回転中の粘土と手の接触している部分から、ごく小さな気泡交じりのヌメヌメした粘土のエキスのようなものが大量に出てきます。これが灰汁です。それはまるで土汁のようです。粘土の灰汁は、耐火度を弱めると言われています。粘土の灰汁を抜くには、こぶし位の大きさに粘土をちぎって、乾かし、布袋に入れて、雨に繰り返し打たせます。灰の灰汁を抜くのと同じ理屈です。
■また、魚や動物や鳥から灰汁が出るのも鍋料理などで私達は経験的に知っています。海水から食塩を採る過程でも、やはり灰汁が出るそうです。海水を煮詰めていくと、灰汁が出るので、それを網で掬い取るのです。その後、食塩が析出します。もちろん植物にも灰汁はあります。こう考えると、多くの物質が灰汁を含んでいるように思えてきます。人間にもあるようです。ところで、灰汁の成分は同じなのでしょうか?なぜか灰汁(アク)は、「灰汁」としか書かないようですが、不思議です。