どきっ(223) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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柳蛙


やなぎ1


まずは・・・花札です。


やなぎ2


そして青柳総本家。


やなぎ3


大阪屋製菓のロゴも柳蛙です。


やなぎ4


和柄Tシャツにも登場します。


やなぎ5


しかし、今回紹介したいのは・・・


新国劇といえば、みたことのない人でも、沢田正二郎の名台詞、「春雨じゃ濡れていこう」はご存知のことでしょう。


やなぎ6

新国劇の紋所は「蛙」だった。落ちても落ちても柳に飛びついていく、蛙。「右に芸術、左に大衆、かざすマークは柳に蛙」。そして島田正吾が残した随筆集のタイトルが、「ふり蛙」。この不屈の精神は、愚直なくらいまっすぐに、島田正吾に受け継がれた。ひとり芝居のあと、満場のお客さんに挨拶する島田正吾は、「沢田先生の教えを胸に」「まだまだ未熟、これからです」「すべては芝居の神様のお導きにしたがうだけ」と必ず繰り返す。芝居に魅せられて、ただそれだけに生きて、栄光も挫折も知った。


やなぎ7

『新国劇』という劇団を今日どれほどの人が記憶に留めていることだろうか。明治、大正、昭和に生きた男性のファンの口から、新国劇は「俺たちの青春」とよく聞く。男の劇団といわれ、男のロマンを描いた作品を数多く上演した新国劇の創立は大正六年四月十八日。創立者澤田正二郎は早稲田大学英文科から、明治四十二年に設立された坪内逍遥の文芸協会演劇研究所の第二期生として学び、逍遥、島村抱月を師とした。後に抱月、松井須磨子の『芸術座』を脱退し、新国劇を創立して国民演劇の確立を目指し苦闘する。そして国民大衆の絶大な人気を得て“澤正”の愛称で呼ばれた。だが、昭和四年三月四日、三十六歳の若さで早世する。その後継者として島田正吾、辰巳柳太郎の二人が抜擢され“柳蛙”のマークの旗標を、昭和六十二年八月の創立七十周年記念公演まで、六十年近く守り継いで、その歴史に幕を降した。近代演劇革命ともいってよい澤田精神の“半歩前進主義”は新国劇の薫陶を受けた心ある者たちによって細々ながらも今も受継がれている。澤田正二郎の苦闘の跡は、村松梢風の名勝負物語のなかで『澤正風雲録』としての著作が残されている。島田正吾、辰巳柳太郎の両師が逝き、新国劇が消滅したとき、その精神を継承する弟子のひとりとして両優が歩んだ道程を、何かのかたちで書き残さなくてはと思っていた矢先、去年の正月に演芸評論家吉川潮さんの来訪を受け「島田正吾物語」を執筆したい旨を聞きたいへん嬉しく思った。初対面の吉川さんに、その気骨を感じた。新国劇は勿論、芸能全般にわたっての見識に鋭い眼をもっておられる。著作『流行歌―西條八十物語―』を読み、その筆致の切味に爽やかさを感じた。新国劇は入団した若者に対して俳優修業の前に先ず礼儀作法、人間としての教育に厳しかった。特に島田の厳しさは格別で妥協を許さなかった。私が今日、脚本を書き演出家としていられるのも、我が師島田のお蔭だと思っている。若い頃の私が書いた脚本の不出来を指摘し、ポスターも出来上っているのに、演目を差し替えられたことがあった。その時は、くやし涙を流し、師を怨んだが、それが私への愛の鞭だと気付いたのは後年になってからだった。眼先の利益を追わぬ島田の演劇創りは、澤田精神そのものであった。吉川潮さんの『芝居の神様―島田正吾・新国劇一代―』は舞台劇風に第一部が、序幕の“白野弁十郎”から始まって、第九幕“殺陣師段平”まで。第二部が、“遠い一つの道”の序幕から、大詰“白野弁十郎・尼寺の場”までと趣向を凝らしたもので、島田、辰巳の更生した新国劇を通して創立者澤田正二郎も語るという新国劇ファンのみならず好劇家にとってもたいへん興味深い読物となっている。生い立ちから澤田先生の弟子としての修業時代。人気劇団の後継者としての苦闘時代。そして、倒産した新国劇の債務を経営者に代り座頭としての道義的責任において返済完了するまで。それからの“ひとり芝居”への挑戦まで。生前の島田は寡黙なことで有名で、余り多くを語らず、自身の著書『ふり蛙』で自身を語る範囲であったが、今回の『芝居の神様』を読めば、サブタイトルにあるように島田正吾一代記でもあり、新国劇一代となっている。劇団が長い歴史を残すには、国民大衆の支持を受けることは勿論だが、各界一流の著名人の支援があったればこそ、ということもわかった。新国劇が幕を降ろして二十年を過ぎたが、その更生新国劇の苦闘の跡が見事に甦った。演劇を志す者にとっての一級品の資料となるだろう。(たなか・りんすけ 脚本家・演出家)


やなぎ8

柳蛙格子の浴衣生地です。かつて存在した日本の劇団『新国劇』が創立55周年を記念して作った「柳蛙格子ゆかた」 です。


やなぎ9

すごい究極の蛙グッズをゲットしたのでした。