振り子時計
■ガリレオ・ガリレイが発見した振り子の等時性(一定の周期で揺れる性質)を応用し、1657年にクリスティアーン・ホイヘンスによって発明された時計である(完成度などにより1656年~1958年の範囲で諸説あり)。振り子時計の基本的な仕組みは、時針を回す動力にゼンマイや錘など(後に電動も)を用い、その動きを一定の時間で動く振り子で制御して時を刻む仕組みとなっている。しかし、振り子を用いているため揺れに弱く、船など乗物の上では使用できない。また地震などの揺れによっても時計が止まってしまい、地震があると往々にその時刻をとどめる証拠となる。改良を重ねながらも、発明から数世紀に渡って最も正確な時計として用いられてきたが、20世紀に入ってより正確なクォーツ時計(水晶時計)が発明されたことによって衰退した。しかしながらその外見上の特徴等から人気があり現在でも広く使用されている。また、飾りとして動く振り子が付いたクォーツ時計も存在する。いわゆる柱時計であり、童謡「大きな古時計」の時計も恐らくこれであるし、童話『七匹の子ヤギ』でも一匹が時計の振り子室に隠れる等、あちこちで話に登る。
■ホイヘンスは、その多才さ、独創性から言っても、十七世紀においてニュートンに比肩できる唯一人の科学者です。数学の天分に恵まれ、物理学と天文学において多くの重要な業績をあげました。望遠鏡を改良し、土星、木星、その他の天体を観察し、土星の環、それに土星の第六衛星を発見し、これをタイタンと命名しました。そして、天文観測をさらに精密なものにし、また、海上の経度の測定をさらに正確にするには、正確な時間測定が必要であることを認識していました。航海用時計、クロノメーターを考案するために、ホイヘンスはガリレオの先例に従い振子時計の仕組みと、振り子の振動の数学的解析法を研究しました。この研究の全成果を本書に収めましたが、時計そのものについて論じているのはその半分にすぎず、他にすべて力学に関する新しい知識について書かれています。ホイヘンスは正確な等時性の振子はサイクロイド曲線の軌跡を描くことを発見し、サイクロイド曲面を持つ側面板を二つ立てて、吊糸がその間を振動するような振子を考案しました。これはサイクロイドの伸開線もまた合同のサイクロイドであるという定理に基いて考えられたものでありました。ホイヘンスは振子の研究を更に発展させました。いろいろな曲線を描く物体の落下を研究し、慣性モーメントならびに重力に関する研究を推進したのです。本書の末尾に、円運動における遠心力理論に関連した十三個の定理を述べています。ホイヘンスは本書の一冊をニュートンに贈りましたが、ニュートンは彼の万有引力理論がホイヘンスの遠心力理論によるところが多いと謝辞を述べています。本書は、ガリレオの「新科学対話」以後の力学に関する最大の貢献をなした書物です。
■フーコーの振り子(仏語 Pendule de Foucault)
長い(通常10m以上の)振り子の底に質量の大きいおもりをつけたもの。地球が自転していることの証明に使用される。レオン・フーコーが1851年1月8日にパリのパンテオンで公開実験を行って、地球の自転を証明した。
■メトロノーム(Metronome)
一定の間隔で音を刻み、ピアノやバイオリンなど、個人で楽器を演奏、あるいは練習する際に、テンポを合わせるために使う音楽用具である。 ヨハン・ネポムク・メルツェル(Johann Nepomuk Mälzel)が1816年に特許を取得した。 音楽家で最初に利用したのはルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンである。もともとは機械式のものが主流であったが、接地の傾きや長年の使用による機構の劣化により、拍(左右の振り子のタイミング)にずれが生じる事があり、最近では機械式の諸欠点を克服した電子式のものが多くなってきている。また、電子式の特性を生かして様々なリズムパターンを刻む事の出来るものや、チューナーに内蔵されているものもある。機械式メトロノームは、一種の実体振り子である。おもり(固定錘)がついた振り子の腕が左右に振れる都度、「カチッ」という音が出るようになっており、この音によって演奏のテンポを合わせる。また、腕には位置を調整できるもうひとつのおもり(遊錘)が付いており、この遊錘を腕の目盛りに沿って上下することで、反復の間隔(つまりテンポの速さ)を調整する。遊錘を移動させると重心の位置が移動するが、振り子全体が剛体である実体振り子では重心が軸に近づくにつれ周期が長くなることを利用し、単振り子(ひもの先におもりをつける振り子)に比べてとても小さいサイズで長い周期のリズムを刻めるように工夫されている。メトロノームが発明されて後、多くの楽譜に、メトロノームの数値によってテンポが示されている。たとえば、M.M.=100とあれば、メトロノームの目盛りを100に合わせた時のテンポを示す。これは1分間におよそ100拍であり「テンポ100」と呼ぶ。ここでM.M.とはメルツェルのメトロノーム(Mälzel's Metronome)の意味である。また、ほとんどのメトロノームは、2拍ごと、3拍ごと、4拍ごと、6拍ごとに小さな鐘などを鳴らす機能が付いている。これを拍子に合わせて、小節の頭を知ることができるのである。日本で販売されているほとんどの機械式メトロノームは毎分 40回~208回までの範囲で動作する。これはJIS規格B9803で定められていたが、この規格は 1999年に廃止になった。一般的な機械式メトロノームの目盛りはほぼ等比的で、次のようになっている。
40~(2刻み)~60
60~(3刻み)~72
72~(4刻み)~120
120~(6刻み)~144
144~(8刻み)~208
電子式のものは、より広く自由な範囲のテンポを設定できるが、実用的には毎分 30回~250回程度のものが多いようである。