時刻表
■松本清張「点と線」(新潮文庫)
松本清張の推理小説としては初めての作品。時刻表を使ったアリバイ作りというモチーフはこの作品が元祖。官僚の汚職の発生を隠す為に、情報を握る部下を自殺させるという、官僚ドラマの典型的なパターンのハシリでもある。
書かれたのは昭和32年(1957)で旅行雑誌「旅」に昭和32年2月号から33年1月号まで掲載されている。松本清張記念館の特企画展で出版された図録「点と線のころ」に東京駅15番線の謎解きが書かれている。
岡田喜秋氏(「点と線」連載当時の担当編集者)「湘南電車のホームにはよく行っていた。『あさかぜ』の発着はその隣のホームで、その間にはレールが二本ある。湘南電車は十二番線だが、十三番線の横須賀線ホームから十五番線の『あさかぜ』の客を見ることができるか。(中略)まだ当時は、『時刻表』にも、列車の『入線』時刻は出ていなかった。そこで、私は『ア ナウンス室できいてみよう』と思い、(中略)聞いてみた。(中略)その結果、午後六時前後は、十四番線に中距離列車が入って、十三番線からは十五番線の『あさかぜ』が見えないことがわかった。この事実を私はさっそく氏に伝えた。『見えるのは、十七時五十七分から十八時〇一分までの、わずか四分間だけですよ』これを聞いて、氏は『これを謎解きに使おう』と言った。連載直前におけるこの事実の発見が、『点と線』のスタートを一ケ月遅らせた。」(「松本清張の旅心」平成9年8月・『松本清張研究3号』砂書房)
旅行雑誌「旅」での「点と線」の掲載は一月号からの予定だったのである。又、ここに書かれている通り折り返しでない限り着番の時間は当時の時刻表には書かれていなかった(後から書かれるようになった)。ようするに「あさかぜ」の15番線への着番時間は国鉄に聞かない限り分からなかったわけである。
松本清張の名作『点と線』が今秋2夜連続でスペシャルドラマに(テレビ朝日系)。主演は、5年ぶりのドラマ出演となるビートたけし。また、壮大なセットやCGを使ったスケール感あふれる映像にも注目。「どっしり腰を据えて見てもらえるドラマ」と藤本一彦プロデューサー。