ブリキの魚(6)
■僕の体をつくった『マグロの缶詰』池乃めだか
中学2年の時から一人暮らしをしてました。仕事は新聞配達でした。朝4時くらいに店に行って、朝刊に折り込みを入れて、自転車に積んで、それから道ばたに落ちてる石を5、6個、ポケットに入れます。え?何に使うか、ですか?野良犬対策です。今でも大きいほうじゃありませんが、当時はもっと背が低くて、誰が見ても小学生でした。きっと犬にもナメられてたんでしょうね、毎日同じ場所で、5、6匹の野犬が、僕の自転車を追いかけて来るんです。ワンワンワンワンワンワン!ムチャクチャ怖かったですね。ほっといたら噛まれますから、思いっきり石をぶつけます。で、向こうがひるんだスキに、自転車でガーッとこいで全速力で逃げるんです。毎日です。当然、奴らも追いかけてきます。石、ぶつけられてるから怒りまくってスゴい顔ですわ。こっちも必死で、ある程度、惰性がついたら、足を噛まれないようにペダルから離して、うしろのほうにこうに上げて、スーパーマンが空を飛んでるみたいにして逃げるんです。たいていは、そうやってウマく逃げとおせてたんですが、ある時、台風で向かい風がキツくてね、いつもの要領で逃げてたら、自転車がコケてしもたんです。犬に追いつかれてね、あちこち噛まれるわ、新聞は風で飛んでいくわ、もうエラい目に遭ったこともありました。そうやって苦労して、忘れもしません、給料が2850円です。その収入だけで1ヵ月食べていかなアカン。普通にしてたらそんなお金、すぐになくなってしまいますから、いつも給料日にはマグロの缶詰を6個買うんです。1個45円くらいやったかなぁ。それと、あとはひと月分のお米を買って準備完了ですわ。つまり、マグロの缶詰をちょっとずつオカズにしてご飯を食べるんです。そうすると3週間はもったかなぁ。でも、あとの10日くらいはオカズなしです。お塩でおにぎりを握って、それだけ食べてましたね。3日も食べ続けると胸やけがしますが、仕方ありません。そんなわけで、あの頃食べたご飯とマグロの缶詰で、僕の体は出来ているんです。今でも、懐かしくて、たまにマグロの缶詰を買ってしまうんですが、あれだけ毎日食べてたのに飽きてないんですね。ついつい美味しくて、全部、食べてしまいます。
■東心斎橋「池乃めだかの店・キャット」
このキャットを仕切っているのは、言わずと知れた吉本新喜劇のタレント、池乃めだか師匠。師匠は時間の許す限りココに来て、トークや歌で店内を盛り上げてくれます。ドアを開けるまではちょっと緊張するかもしれませんが、中はゆったりとくつろげ、アットホームな雰囲気。お値段もリーズナブルで、心置きなくお酒・カラオケ、そして会話が楽しめるミナミのオススメスポットです。店は30坪程度のスナックで、カウンター席とテーブル席とミニステージが。照明は明るく、男性5,000円、女性3,000円の一定料金の明朗会計がウリで、壁に飾られたボードには、吉本のタレントさんを始め、多くのスポーツ選手や、芸能人が「キャット」を訪れ、記念写真を残しています。
私の娘がお店に行ってきたと・・・うれしそうに写真を見せてくれました。
ホンコンさんもおられました。