ぎょ貝類(27)
■巻貝(巻き貝、まきがい)は、いくつかの総称を含む。
1.腹足綱に属する軟体動物の総称。
2.腹足綱 前鰓亜綱に属する軟体動物の総称。
3.腹足綱に属する軟体動物で貝殻をもつ生物の総称(1からアメフラシやウミウシなどの後鰓亜綱とナメクジを除く)。
4.腹足綱に属する軟体動物で螺旋状の貝殻をもつ生物の総称(3からカサガイやアワビなどを除く)。
5.服足類でないが、頭足類の一部に巻き貝を形成するもの。
または、それら軟体動物の貝殻を指す。頭足類に含まれる巻き貝状の殻を形成するものは、殻の方に本体とは別の名を持つものがある(カイダコ→アオイガイ・フネダコ→タコブネ)。
大半の動物は左右対称か点対称であるが、巻貝は螺旋状であり対称でない。ただし、一部の完全平巻きのものは左右対称になる。巻貝には左巻きと右巻きがいる。時計回りが右巻き、反時計回りが左巻きである。見分け方の一つに、巻き貝のとがった方を上に向け、殻の入り口が見えるように持ったとき、殻の口が向かって右側に見えるのが右巻き、左側に見えるのが左巻きである。巻く方向は、種によって決まっているのが普通である。9割の種が右巻きと言われているが、理由はよくわかっていない。カタツムリの多くは右巻きであるが、一部に左巻きの種がある。また、左右両巻の種も存在する。左右両巻きの種では内臓の配置も左右逆になっている。巻く方向は1個の遺伝子か強く連鎖する複数個の遺伝子によって決定される。左右両巻きの種は発生段階から左右逆になっているのが通説であったが、そうではないという示唆もある。
■蝸牛(かぎゅう)とは、内耳にある感覚器官。鼓膜から耳小骨を通じて伝えられた振動を電気信号に変換し蝸牛神経を通じて中枢に送る。周波数分析の機能もかねる。感覚機能はコルチ器(Corti organ)にある有毛細胞に由来する。動物のカタツムリに似た巻貝状の形態のため蝸牛と呼ばれる。
■ホラガイ(法螺貝、Charonia tritonis) フジツガイ科(旧分類 中腹足目 フジツガイ科)に属する巻貝の一種。日本に産する最大級の巻貝。オニヒトデの天敵。貝殻を加工した吹奏楽器が、日本、東南アジア、オセアニアで見られる。
日本では、戦国時代には合戦における合図や戦意高揚のために用いられた。修験道においては、立螺作法(りゅうらさほう)と呼ばれる実践が修行される。立螺作法には、当山派・本山派などの修験道各派によって流儀を異にし、吹奏の音色は微妙に違う。大まかには乙音(低音階)、甲音(高音階)、更には調べ、半音、当り、揺り、止め(極高音)などを様々に組み合わせて、獅子吼に擬して仏の説法とし、悪魔降伏の威力を発揮し、更には山中を駈ける修験者同士の意思疎通を図る法具として用いられる。昭和初期に発表された醍醐寺三宝院当山派本間龍演師の『立螺秘巻』は、その後の修験者、とりわけ吹螺師を修行する者の必須テキストとして評価伝承されている。東大寺二月堂の「お水取り」では、堂内から鬼を追い祓うため、法螺貝が吹き鳴らされる。和名の由来は、中がホラ(洞)であるという説、音の朗らかであるという説、オオカラタニシ(大殻螺)の略という説、といろいろある。