ぎょ(463) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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ぎょ貝類(11)


成人向けマンガを紹介しましたので・・・早急にイメージを修復したいと思います。


川口


■川口軌外「少女と貝殻」

横長の大きな画面の右に少女、左の下に貝殻、その他、様々なものが描かれています。少女がかがんでいるのは、大きな帆立貝の上のようです。帆立貝に乗った裸の女性といえば、ヴィーナスの誕生の神話を思い出します。ヴィーナスは海の泡から生まれ、帆立貝に乗ってキプロス島へ上陸したとされています。すると、この少女の左に描かれた鱗のような部分は、彼女が生まれ出てきた泡のなごりでしょうか。彼女のまとう青いローブと、ひざの辺りからのびる若木は、彼女が天上の世界から地上に降りたことを表わしているようです。少女は無理な姿勢で左の方を見やっていますが、画面の左上に描かれているのは、彼女を地上へと押しやる風の神でしょうか。翼とからだ、そして吹きだす風を、複雑な線の中から見出すことができます。その下には、空と水平線の向こうに、かすむ陸地が描かれています。海岸に散らばっているのは、大粒の真珠のようです。ヴィーナスの誕生を描いた作品としては、ボッティチェリのものが有名です。軌外は、ヨーロッパ滞在中にイタリアへも旅行し、ウフィツィ美術館にあるその作品も、見ていたはずです。彼は、ヨーロッパで学んだ神話と、キュビスムやシュルレアリスムといった新しい絵の描き方を結びつけ、日本で大きな作品に実らせたのでした。


この作品は資料によると1934年に描かれたと記されています。


不思議・・・というか、偶然の一致に興奮してしまいました。


と言いますのが、私の大好きな「蝶と貝の画家」三岸好太郎さんの作品に同年のものがあるからなのです。


みぎし1


■三岸好太郎「のんびり貝」1934

横長の画面の中央に描かれた大きなシャコ貝。「のんびり貝」という命名そのままにユーモラスな雰囲気が漂うが、長く伸びた黒い影やぽっかり口を開けた貝殻の表現にはどこか虚無的な不安も感じられる。1934(昭和9)年春、旅先から帰った三岸は蝶と貝殻をモチーフとした一連の作品をわずか10日間ほどで描きあげて3月の第4回独立展に出品した。前年の作品とは一変した幻想的な表現は賛否両論を引き起こしている。その後、この作品が売れ、三岸は節子夫人とともに「貝殻旅行」と称して関西旅行に出かけるが、その帰途、一人とどまった名古屋の旅館で持病の胃潰瘍に倒れ、31歳の短い生涯を閉じることになる。


川口軌外「少女と貝殻」と三岸好太郎「のんびり貝」・・・


ともに「独立展」に関係されていましたので、互いに影響されていたのかもしれません。


それにしても「のんびり貝」という題名は、三岸さんの短くも激しい人生を考えると、とても感慨深い作品です。


みぎし2