ぎょ(286) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[20]


この文学散歩をどうしめくくるか・・・ずっと歩きながら考えてきた。


いろいろな書名に刺激を受け、様々な装丁に出会い、もちろん内容に心ときめき・・・


やはり、私の「うぉーきんぐ」は・・・


ブルトン1


■『溶ける魚』Poisson soluble (1924年)   André Breton

最初『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』として刊行、さらに1929年の増補新版に再録されるが、その後「宣言」のみが版を重ね、1962年版『シュルレアリスム宣言集』で復活する。1924年3月から5月にかけて7冊のノートに「自動記述」によって書かれた114篇におよぶテクストから32篇を選択して編んだ散文詩集だが、ブルトン自身はこれを「小話(コント)」と呼んでいる。後に『ナジャ』や『通底器』といった散文作品に発展していくモチーフが多く見られ、シュルレアリスムのイメージの宝庫というべき作品集。『シュルレアリスム宣言』の中に「私こそが溶ける魚ではないか(…)人間は自分の思考の中で溶けるのだ!」とある。


ブルトン2


・・・泉が入ってくる。泉は街を駆けまわってわずかな日陰を探した。必要なものが見つからなかったので、彼女は嘆きながら、見てきたことを語る。いくつものランプでできた太陽を見たら、もうひとつの太陽より心にしみたの、本当よ。カフェのテラスで歌を一つか二つ歌ったら、黄色と白の重い花束を投げられたのよ。髪を顔になでつけたら、髪の匂いはとてもきつかったわ。彼女は眠くてたまらないのだが、本当に必要なのは、昆虫の首飾りやガラスの腕飾りに囲まれて美しい星で寝ることだろうか? 泉はおだやかに笑い、僕の手が触れたのに気づかなかった。彼女は僕の手の下でかすかに身をかがめて、鳥たちが彼女の冷気しか知りたがらないことについて考えている。彼女は気をつけなければならない、僕は彼女をほかの場所に連れて行くことができる、町も田舎もないところにだって。ひとりの美しいマヌカンがこの冬エレガントな女性たちのために〈ミラージュ〉のドレスを発表するだろうが、だれがこのすてきな新作を成功させるのか、みなさんはご存知ですか? 泉、もちろん泉です、僕は泉をごく簡単にこのあたりに連れてきたのですが、ここでは僕の考えは可能なものの彼方に退き、無機的な部屋の彼方にさえ退き、そこでは、僕ほど素性怪しくはないトゥアレグ族たちが遊牧生活に満足し、装飾過剰の妻たちの間で暮らしているのです。泉、それは僕から離れて、あそこで夜を明かす木の葉の渦の中に移っていくすべてのもので、そこで僕の変わりやすい考えはわずかな風にも流され、彼女はたえず斧におそわれる樹木で、彼女は太陽の中で血を流し、そして彼女は僕の言葉の鏡なのです。・・・


ブルトン3


ブルトン4