星座(9)
「マーライオン」の形を見ていて・・・「タツノオトシゴ」が気になった。
■日本語で「ウミウマ」と呼ばれる魚がいる。逆立ち泳ぎをするヨウジウオ科の魚。学名はHippocampus cornatasと言う。英名はseahorseで文字通り海の馬だ。中国語でも海馬(ハイマ-)と言う。 Hippocampusはネプチュ-ン(ポセイドンのロ-マ名)が創造したという上半身が馬で下半身が魚のわかりやすく言えば人魚の馬バ-ジョンといったところでしょうか。これもまさに海馬です。
■「sea horse」(「horse」=「馬」) 日本でも、ウミウマ、ウマウオ、ウマノカオ、ウマノコといった地方名があります。世界各地で、タツノオトシゴは『馬』にちなんだ名前がつけられているようです。確かに、頭の形は馬っぽいです。また、タツノオトシゴは、漢字で書くと『竜の落とし子』となります。竜やドラゴンと聞いて、タツノオトシゴをイメージする方もいるかと思います。確かに、あのしなやかな体のラインは、竜に似ています。タツノオトシゴに架空の動物であるドラゴンを重ねたのでしょう。
■世界的に似たような発想をしている。弁解の様にギリシャ神話ではこのHippocampusは収穫の女神ディメティルの歓心を得るために、駱駝、河馬、麒麟、縞馬などの試作品を作ったが、どれもあまり出来が良くなかった。ただこのHippocampusだけは大層気に入って女神はポセイドンを見る目が変わったそうです。女性が贈り物に弱いのはだいぶ昔からなのですね。ただ、ポセイドンはギリシャの神々のなかでも女性に手の早いゼウスの兄弟だけあって、浮気が絶えなかったようです。彼の妻アンピトリテの嫉妬をなだめる為に、タコやイソギンチャクを作っています。奥さんへの贈り物より立派に見えたのは確かでしょう。日本語のタツノオトシゴはちょっと変わった表現ですけど、英語でドラゴン・フィツシュと呼ぶこともあるそうですから、日本人だけの発想では無いようです。日本語では不思議なことに海馬と書くとトドのことになります。トドは中国語ではなんと言うかと調べてみると「北海獅」と書きます。英名はSteller's sea lionとあります。Stellaとは人名ですからこれを追いかけるとラテン語で聖母マリアの肩書きの一つでステラ・マリスだそうです。ラテン語で詠われる賛美歌などにはよく耳にするそうですけど、そんな教会には足を踏み入れたことがないからよくは知らない。マリア様のライオンとは面白い命名だけどこの辺のことは聖書にも載っていないようだし、海星とも言うらしい。
■タツノオトシゴは海に囲まれた日本ではその生態も知られていたかどうかはともかくとして、オスの育児嚢にメスが卵を産み付けて育てる。平清盛が献上した薬箱にはタツノオトシゴが6匹も入っていたとの記録もあり、安産のお守りとされていたようです。ギリシャでもその辺の事が分かっていて忙しい収穫の女神に子育ては心配いらないからと口説いたのでしょうか。タツノオトシゴなんて命名はユニ-クな方に入るけど、この仲間にタツノイトコやタツノハトコと言うのがいるそうだから驚きです。
上画像が「タツノイトコ」下画像が「タツノハトコ」です。
■脳の部位にも「海馬」というところがある。タツノオトシゴに形が似ていて、英語名の「sea horse」から、このような名前になったそうです。脳の「海馬」の英語名はHippocampusで、タツノオトシゴの学名と同じなんですが、タツノオトシゴに由来すると言う説と、上で述べた海神ポセイドンがまたがる海馬に由来する説があるそうです。