夭折の画家28歳「青木繁」・・・美術教科書にも載り、よく知られた油彩画「海の幸」が生まれてちょうど百年。思ったより絵は小さい。だが圧倒的な迫力である。モリを持ち、仕留めた大魚を担いだ赤銅色のたくましい男たちの行進。太古の海へのあこがれを描く、明治の浪漫主義を代表する作品として重要文化財にもなっている。1904年といえば日露開戦の年。青木はこの夏、東京美術学校の卒業記念に、千葉県の布良海岸に写生旅行して制作。秋の展覧会に出品して評判を呼ぶ。画面中央に描かれた、こちらを不安そうに見つめる白い顔の人物が妙に気になる。海の男たちの足取りの重々しさは、その先に行き着く暗い時代を予感したかのようでもある。恋人をモデルに後で描き込んだとされる白い顔も、そうした予兆なのかもしれない。