★興國高の3年生DF前田誠【FOOTBALL ZONE編集部】
両足を器用に使いこなし、左サイドから鋭い縦突破からのクロス、ハーフスペースに顔を出して攻撃を組み立て、果敢にポケットを狙っていく。興國の3年生DF前田誠は機動力とキックを生かして左サイドでリズムを生み出した。昨年途中はCチームにいたこともあった。今年も開幕時はBチームにいた。それでも春すぎからプリンスリーグ関西1部でスタメン起用されることも増えたが、夏のスペイン遠征で再びスタメンから外れるようになったという。
「ずっと『このままではいけない』と思っていました。正直、僕はもっと人間的に成長しないといけなくて、高2の時は自分以外のところに矢印が向いていたので、サッカーのために生活をして、自分に矢印を向けることを意識しました。六車(拓也)監督は自分の課題である内側に入ってビルドアップや関わりを持つことを指摘してくれて、これは僕が成長するために必要なこととして求めてくれている。そこで苦手だからと言って逃げていたら成長はないと思っているので、練習で積極的に自分からパスを出す、自分から作っていくという意欲を持ってやっています」
苦しんだ昨年、そして夏を超えて、心身ともに逞しさを増した。サイドバックにコンバートされた高校1年生の時に「右だけでなく、左サイドバックもできたほうがいいと思って、左足を徹底してトレーニングしました」と、両足のキックという武器を身につけたことで、ここでの心身の成長はより彼のプレーの質をワンランク上に押し上げた。
「試合に出るということは簡単なことではないと痛感しています。ミスした時こそ自分に矢印を向ける。成長意欲を持つことを大切にして、自分で自分のサッカーの時間を奪わないようにやっていきたい」(前田)
迎えた第104回全国高校サッカー選手権大会大阪府予選準決勝の阪南大高戦。準々決勝に続いて2試合連続スタメンを飾った前田は、前述した通り左右のキックを使いこなしながら、オーバーラップとインナーラップを使い分けて、攻撃に厚みをもたらした。守備面でも後半は阪南大高のドリブラーMF三浦悠人の突破に苦しむシーンもあったが、最後まで足を止めずに必死で食らいついた。結果は1-0で勝利し、3年ぶりの決勝進出を果たした。
「今日は勝つことはできましたが、決勝に上がっただけ。僕らがめざしているのは日本一なので、1週間かけてもう一回チームでいい準備をして決勝に臨みたいです。プリンス関西もあと2試合残っていて、プレミア参入戦もかかっているので、少しでも多く、長くこのチームでサッカーができるように頑張りたいと思います」
試合後、前田はこう語気を強めてチームとしての思いを口にした。そして、彼自身の思いを聞くと、同じように力強くこう答えた。
「僕は今もレギュラーを獲得しているわけではありません。だからこそ、全力で後悔のないようにやりたいと思います」
寄り道はしたかもしれないが、今の彼の心の中にあるのはサッカーが大好きということと、チームへの感謝の気持ち。その熱い思いをまずは履正社との決勝の舞台に全力でぶつけていく。FOOTBALL ZONE編集部
