詩人・谷郁雄さんがコロナ下で生み出した詩集。
たぶん1日1ページくらいのゆっくりしたペースで読むのが一番いい気がするが、僕はついつい一気に最後まで読んでしまった。
冒頭の詩「裏返し」から笑わされて、「朝の風景」でしっとり……。何気ない日常の風景なのに、ときおり胸に込み上げるものがある。
ひとつの詩を読むたびに、自分の過去の記憶や、いろんな感情が呼び起こされて、時には音楽が聞こえてきたり……。
最後に収録されている詩「スニーカー」の、次の言葉にはハッとさせられた。
大切なのは
夢じゃない
何かを
夢見たときの
心のときめき
がぜん谷郁雄さんのことが気になって、本書の出版に関するインタビュー記事も読んだが、これも面白かった。
人生にはときどき未来を暗示するような出来事が起こるものだ。
あと、谷さんは大学を中退されているらしく、その点にもすごく親近感を感じた(笑)。
本当は詩の一篇ずつについて感想を述べたいくらいだが、きりがないのでこのへんで。
とにかく好きな詩がたくさんあって、「朝の風景」とか読んでいるとなぜか涙が出てくる。
「時間とは何か?」と問われたときに、「ここにあるよ」と手渡したくなるような本。
人生の中でふと立ち止まった時、ぜひ手に取って読んで欲しい。