剣道が単なるスポーツではなく、
仏教思想や一人ひとりの生き方そのものと
深く関わっていることを教えてくれる。
特に強調されるのが
「自我を捨てること」の大切さ。
仏教ではよく言われることだが、
剣道においても重要だという。
「自分のことはさておいて、
相手のことだけを考えてみたらどうか」(15頁)
これなどは剣道というよりも、
僕たちの日常生活について語っているようでもある。
仕合で相手に打ち込むにしても、
自分勝手に打ち込むのではない。
相手のことをしっかりと把握し、
そのうえで、
「『すきがありました。ここです』
と、ポンと打っていく」。
「打とう、打たれまいとすれば、
相手はそれに応じた動きをする。
つまり自分の心が相手の心に映っているのだ」
こう見てくると、
剣道の本質においては、
勝ち負けは二の次であることがわかる。
それが剣道の「術」ではなく
「道」である所以だろう。