おなかと背中。
人間を前後に挟むように存在する、
おなかと背中。
正反対のようでいて、
実はひとつにつながっている、
おなかと背中。
おなかと背中と聞いて
多くの人がまず思い浮かべるのは、
きっとこの歌だろう。
♪
どうしておなかがへるのかな
けんかをするとへるのかな
なかよししててもへるもんな
かあちゃんかあちゃん
おなかとせなかがくっつくぞ
「おなかのへるうた」
作詞:阪田寛夫
作曲:大中恩
有名な歌だ。
だが今回僕が書きたいのは、
これとは全く関係がない。
「おなかがへることによって、
おなかとせなかがくっつくことの恐怖」
は確かに筆舌に尽くし難いものがある。
幼稚園児の頃にこの歌を歌って
よく泣き出さなかったものだ。
きっと歌詞の意味が
まだよくわかっていなかったのだろう。
しかし僕がこれから書こうとしているのは、
それとは全く別の因果関係の話である。
それは何か。
単刀直入に言おう。
「おなかが出ると背中がかぶれる」
という因果関係である。
この因果関係を発見したのは、
数年前の夏のことだ。
僕は肌がそんなに弱い方ではないが、
ある夏、急に背中がかぶれるようになった。
「なんでやろ、歳のせいかなあ」
この推測は半分アタリで、半分ハズレだった。
「今までと何が違うんやろ……」
ひと夏の間、
あらゆる科学理論を援用しながら考え続け、
うろこ雲が秋の空を彩り始めたころ、
ついにある結論にたどり着いた。
それは、
「おなかが出てきたから、
背中がかぶれるようになった」
ということである。
つまりこうだ。
夏の間、僕はTシャツを着ている。
夏は暑いので、当然すぐ汗をかく。
だがこれまでは、だからといって
背中がかぶれるようなことはなかった。
汗をかいても、
しばらくすればTシャツも体も
勝手に乾いていたからである。
ところが、
昔に比べておなかが出たことによって、
必然的に生地が前方に引っ張られて、
背中にピタッとくっつく形になった。
これによって、
濡れたTシャツと背中が
乾かないままずっとくっつくことになり、
結果「かぶれる」という事態が
発生していたというわけである。
これが、
「おなかが出ると背中がかぶれる」
という因果関係の正体だった。
果たして今年はどうだろうか。
少なくとも去年よりは少しだけ
おなかがへっこんだという自負がある。
今年の夏の目標は、
「かぶれない」
でいこうと思う。