わらび餅づくり成功の翌朝。
その余韻を楽しもうと、
冷蔵庫で冷やしていたわらび餅をとり出し、
きな粉をかけて口に運んだ。
「お前……誰だよ」
そのわらび餅は、
もう俺の知っている
きのうのわらび餅ではなかった。
魅惑のプルプル、ツルンとした食感は失われ、
ただ口の中で無気力に崩壊していく固形物。
「おい、どうした。何があったんだよ。
……しっかりしろよ!!」
冷たくなったそいつを、
俺はただ口に運び続けるしかなかった。
後から知ったことだが、
わらび餅は冷やすと固くなってしまうため、
食べる前にもう一度お湯で茹で直し、
再び冷水で冷やすといいらしい。
「何で教えてくれなかったんだよ……」
皿の上に残ったわらび餅は、
窓から差す朝日を浴びながら、
静かに笑っているように見えた。