パン屋とイートインと味の関係 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
ある人が「おいしい」と言っていたパン屋さん。

先日たまたま通りかかったので、
カレーパンとクリームパンを買った。

家に帰ってさっそく食べてみたのだが、
まあまあそれなりの味で、
期待していたほどではなかった。

もちろん味の好みは人それぞれなので、
そんなに不思議に思うことではない。

しかしその「おいしい」と言っていた人の
「おいしい」は、大抵裏切らないのだ。

ではそれを前提にして、
今回のことを説明することはできないか。

実はひとつ心当たりがある。

これはあくまで
僕の経験則にすぎないので、
一般化することはできないことを
先にお断りしておく。

そのパン屋さんには、
店内でパンを食べるスペース、
いわゆる「イートインスペース」がある。

普通に考えると、
イートインのあるパン屋さんの方が、
それがないパン屋さんよりも
おいしい気がする。

お客さんが目の前で食べるのだから、
いいかげんなものは作れないだろう。

ところが僕の経験則では、
これが逆なのである。

イートインスペースのあるパン屋さんより、
ないパン屋さんの方がおいしい気がする。

これは一体どういうことなのか。

これまた単なる仮説にすぎないのだが、
次のようには考えられないだろうか。

イートインがあるお店は、
当然「焼きたてのパン」を、
その場で味わってもらいたいと考えるだろう。

客にとっても、
それがイートインの
醍醐味のひとつに違いない。

確かに、パンは焼きたてが
一番おいしいだろう。

つまり、
イートインのあるパン屋の作り手は、
その焼きたてのタイミングで、
おいしさのピークがくるパンを
一生懸命つくっているのである。

ところが、僕のような客の場合、
イートインを利用することはほとんどない。
たいてい家にもって帰って食べる。

そうすると、作る側が狙っている
「焼きたて」のタイミングで食べることは
まずないのである。

それに対してイートインがないパン屋では、
はなから「パンは持って帰って食べるもの」
という前提が存在する。

そうである以上、作り手は、
「パンが冷めた時」をピークに
おいしいパンを目指して作るだろう。

僕はここに、イートインのあるパン屋と、
それがないパン屋の違いを見るのである。

だから結論としては、
「どちらもおいしいパンを作っている」。

ただし、そのおいしさのピークが
「焼きたて」にあるのか、
「冷めてから」にあるのか、
という違いが生じてくるのである。

だから、その店を「おいしい」と
教えてくれたその人は、
焼きたてのパンをイートインで
食べたのかもしれない。

それを僕は持って帰って
冷めた状態で食べたものだから、
もひとつだなぁと感じたのではないか。

という、どうでもいい話でした。