青山のカフェに入った。
レジで注文をする。
お金を支払いながら
ふとレジのカウンターを見ると、
カボチャのオバケが描かれた紙に、
こんなことが書かれている。
「トリック・オア・トリートと言ってみてね!」
そうだ、今日はハロウィンなのだ!
でも、こんなん言うの恥ずかしいなぁ。
それにしても、
こんなサービスがあるなら
店員も少しは振ってくれたらいいのに…。
だがここは頑張って言ってみよう!!
何がもらえるんかちょっと気になるし。
意を決した僕は、
やや語気を強めて言ってみた。
「トリック・オア・トリート」
「……」
目が合った若い男性店員との間に、
気まずい空気が流れた。
店員は申し訳なさそうに、
さっきの紙の下の方を指差して言った。
「すいません、ここに書いてますが、
小学生以下の方が対象でして……」
確かに明記されていた。
やってしまったようだ。
「すいません、失礼しました……」
僕が恥じ入っていると、
店員さんはとまどいながら、
「でも、せっかくですので……」
と言って、クッキーを手渡してくれた。
「え、いいんですか?
すいません、ありがとうございます!」
慣れないことをすると
たいていこういうことになる。
「トリック・オア・トリート」
もう二度と口にすることはないだろう。

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