夕暮れの闇が映し出すもの | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
都会にいると感じられないが、
田舎にいると思い出す感覚というのがある。

太陽が姿を消す夕暮れ時は、
逢魔が時とも言われるように、
何か不穏な気分に包まれるものだ。

夕暮れはあらゆる景色や存在を
闇の濃淡に収斂させる。

それまで見えていたものが見えなくなり、
それまで見えなかったものが見えてくる。

夕暮れ時とはそんな時間である。

たとえば僕が
「山の大きさ」を感じるのは
この夕暮れ時のころだ。

昼間に見る山は、
その本来の大きさを
「山」というイメージの中に
包み隠している。

ところが夕暮れになると、
山は他のあらゆる物や景色と区別されずに、
「ひとつの影」として存在するようになる。

この時の山の大きさは
日常世界の範囲をはるかに超越した、
異界のもののようにさえ感じられる。

昼間の美しく朗らかな山は、
もはや畏怖の対象として映っている。

光を当てることによって
見えなくなるものがあることを
昔の人たちは知っていたに違いない。