往復書簡 思想としての労働 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
往復書簡思想としての労働 (人間選書 (201))/農山漁村文化協会

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二人の著者が、思想の縦糸と横糸を、
丁寧に、ゆっくりと紡いでゆくような、
編み物のような往復書簡である。

近代以降の労働のあり方が、
人々の精神のあり方をも変化させてゆく。

相互性を失った労働は、
多様性の喪失とともに、
ひとびとを個人へと解体する。

そのようなプロセスを詳細にあぶり出す本書は、
近代の労働について考察する上で
必ず読んでおきたい一冊である。

「労働とは『自己実現』だというような今日的な発想は、
 いかにも近代的な浅薄さを感じさせます。
 それは労働を日常的な営みから
 切り離してしまった近代人たちが、
 自分の労働に意味付けを
 しなくてはならなくなった時代の発想、
 つまり労働に対して構えなければならなくなった
 人々の発想を感じさせてしまいます。」

このような視点を、
いったい誰が教えてくれるだろうか。

長い歴史の中で現代をとらえることでしか
見えてこないものがある。

キャリアデザインなどについて考えるまえに、
そもそも人間にとって労働とはなにか、
といったことに想いを馳せてみることの方が、
いまの時代にはずいぶんよい気がするが、
どないでしょう。