人間とは何か 実存的精神療法 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
人間とは何か 実存的精神療法/春秋社

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僕がフランクルのことを知ったのは、
哲学者の山田邦男さんを通してだった。

彼の語るフランクルの思想はとても魅力的で、
思わずこの『人間とは何か』を手に取ってしまった。

もちろんフランクルと言えば、
ナチスの強制収容所での体験を描いた
『夜と霧』が有名である。

「どのような過酷な状況にあっても、
 人間には必ず生きる意味がある」

という彼のメッセージは、
3.11以降、改めて脚光を浴びている。

そんな彼の思想の集大成とも言えるものが、
この『人間とは何か』なのである。

フランクルが強制収容所に収監されるとき、
彼は大切な原稿を絶対に手放すまいと、
コートに縫い付けてまで
守ろうとしたことはよく知られている。
その原稿こそ、この『人間とは何か』の
元となる原稿だったのだ。

1946年に原著の初版が出版されてからも、
フランクルは生涯を通して
この本の推敲を重ねたという。
それだけに、全編をとおして言葉に重みがあり、
読み飛ばすことができないのである。
そのうえ訳注や解説も非常に充実しており、
まさに亀の歩みの読書となった。

本は付箋だらけになり、
いまやまるですごく勉強してる人かのような
佇まいを偽装してくれている。

ぜひ多くの人にオススメしたいところだが、
なにぶん450ページを超える大著であり、
やや専門的な内容についてもふれられている。

なので、とりあえずフランクルの
エッセンスにふれたいという方には、
山田邦男さんが書いた
フランクルに関する本をオススメしたい。

山田さんによるフランクル思想の解釈は、
西田幾多郎などの東洋思想と結びつけて語られており、
とっても親しみやすく、なおかつ奥深い。

僕には、この山田さんの思想、
そしてフランクルへの敬意が、
フランクルの思想をより高みへと
引き上げているようにさえ思えるのである。