老子・荘子 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
老子・荘子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)/野村 茂夫

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老子も荘子もずいぶん
深遠なことを言っているのに、
どことなくユーモラスなところがある。

ユーモア(humor)という言葉は、
ヒューマン(human)からきたという説がある。
だとすれば、人間の本質を語るとき、
ユーモラスなものが出てくるのは
自然なことなのかもしれない。

内容的には逆転の発想の
オンパレードのようにも見えるが、
それはただ単に、僕たちがいかに
人間本来のあり方と逆の生き方をしているか、
を示しているだけなのかもしれない。

だからこそ、現代社会に息苦しさを
感じている人にこそ勧めたい本である。
「大器晩成」という言葉に、
いったいどれだけの人たちが
励まされてきたことだろうか。

愚民政策のロジックのように
見られることもあると思うが、
荘子が「徳を支離にする」
(常識的道徳規範を無視すること)
ことを勧めていることからも、
別のものと見たほうがいいだろう。

愚民政策は、
何を考えない民衆をつくることだけではなく、
支配者層がつくる規範を
浸透させることで成立するのだから。

面白かったのは、
「唇竭きれば則ち歯寒く、
 魯酒薄くして邯鄲囲まる」の逸話。
無関係なものにとばっちりが及ぶことの意味だが、
こうした不条理はいたるところで
起こっていることだろう。
それをいつでも笑い飛ばせるように
ありたいものである。