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私たち現代人が避けて通れない
「疎外」の問題について書かれた本。
この「疎外」という概念自体が
ちょっととらえにくいかもしれないので、
本書の訳者あとがき部分から引用してみよう。
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哲学的な用語としては
自己にとってよそよそしい、別なものになる、
ならせられるということであり、
人間の疎外とは簡単に言えば
人間が非人間化することである。
近代における人間の疎外は、
個人が自分の同胞である他の人間や、
一般にまた自分の周囲の世界に対して
もっぱら利害打算の立場から接し、
それらとの間に非常によそよそしい関係しか
もちえなくなってゆく傾向として現われている。
そのために個人は深い孤独の中に生きている。
そして多くの人たちは自分の従事している
仕事において自己の人格的な
欲求の充足を見出すことができず、
自我喪失の状態におちいっているのである。
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これだけでおなかいっぱいに
なりそうな気がしないでもないが(笑)、
本文では実に興味深い例をあげながら
具体的に説明してくれているので、
かなり面白く読むことができる。
人間がつくりだしたものによって、
人間が逆に支配されていく。
しかも私たちはそこから逃れる術をもたない。
「自分でよび出した精霊たちだが、
いまとなっては追い出すことができぬ。」
「人間が自分の同胞を手段と見なし、
自分自身をも手段に下落させ、
ほかの勢力の玩弄物となっている状態が、
現実の姿なのである。」
時間が貨幣におきかえられ、
労働が商品におきかえられてゆく。
それが現代の社会である。
この疎外の問題を克服できるとすれば、
それは目に見えないものを、
目に見えないままに存在させうる世界、
目に見えないままに共有しうる世界、
なのではないだろうか。