貨幣の思想史―お金について考えた人びと | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
貨幣の思想史―お金について考えた人びと (新潮選書)/内山 節

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経済学者ではなく、哲学者が書いた貨幣の本。
だが、ある大学の経済学の授業では、
教科書として使われているらしい。

著者が述べているように、この本の目的は、

「貨幣をめぐる古典経済学の担い手たちの悩みが、
 いかに発生してきたのかを明らかにすること」

であり、

「その悩みを、なぜ彼らの理論は
 解決することができなかったのか」

についての考察である。

いまや私たちの社会は、貨幣なしには
成立しえないかのように展開している。

しかしかつての古典経済学の担い手たちは、
そのことを自明のこととしてはとらえていなかった。
むしろその弊害をいかに克服するか、
あるいはいかに貨幣を「抹殺するか」について
考え続けていたのである。

「神の見えざる手」で知られるアダム・スミスも、
貨幣に「神」の地位を与えてはならないと考えた。

しかし今や、貨幣にひざまづかずに
おれる人はほとんどいない。

この本には多くの経済学者や思想家が登場するが、
僕が特に面白いと感じたのは、
モーゼス・ヘスやジョン・ロックの思想である。

古典経済学の入門書として、
そして幸福な社会のあり方について考えるには、
うってつけの一冊であろう。