未来についての想像力―農ある世界への構想 | 杉原学の哲学ブログ「独唱しながら読書しろ!」
未来についての想像力―農ある世界への構想/内山 節

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僕がいま最も注目している哲学者、
内山節さんの講演記録。

とても薄い本なので、
さらっと1時間くらいで読めてしまいます。

内山さんのすごいところは、
どんなに哲学的思考を重ねても、
絶対に現実の問題意識から離れないこと。

これからの社会を考えていくうえで
欠かすことのできない視点が
ぎっしり詰め込まれています。

人類が大きな価値観の転換を迫られているいま、
哲学的思考の重要性はますます
高まっているのではないでしょうか。

以下、引用メモです。
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市場でつながり、その中で効率を求めるという
現在の世界に飲み込まれていると、
いくら頭の中で環境問題が重要だと考えていても、
そのための行動を取りようがないというのが
現実だという気がするのです。(p26)

人が亡くなるということは、
人々の間で死を確認していくとか、
そういう一種の人間の文化的営みの中で
見つけ出されていくものであって、
科学の判定基準とは違うのです。
(中略)人間は機械ではありません。
人間の死というのは、
単なる機械の終了ではない
ということを言いたいのです。(p29-p30)

それは、たぶん人間関係でも同じで、
他の人と結ばれていることによって、
その人から生命をいただいているし、
私もその人に生命をあげている。
そういうふうにお互いに生命を
出し合っている相互関係の中で、
私たちは生きているのではないか。(p31)

農業の基本は持続性である(p32)

持続性のある農業をつくるためには、
持続性のある農村が必要だということです。(p33)

俗に言う・いい会社・に入っても嬉しそうな顔を
していないということの対極に、農業的世界が
見え始めているのだという気もいたします。(p36)

近代になってアメリカの社会がある意味で
世界の主導権を握ってきたということは、
世界にとって不幸であったと私は思っています。
それはつまり、歴史のない社会が
主導権を取ることの不幸です。(p37)

そうではなくて、
自分の郷土にどういう風土、
つまり自然の世界があって、
そこにどのような人間の営みがあって、
どのように人間たちが生きているのか。
それを深く知ったときに、
実は同じような場所が世界中に
あることを理解するわけです。(p42)

持続する産業とは何か。
それは、その風土と矛盾しない産業です。(p43)

地理的空間として狭いという意味ではなくて、
結び合っている世界がはっきり見えていること。
それがローカルな世界である。(p44)


満足度
★★★☆☆


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