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著者がアメリカのトップトレーダーたちに
その成功の秘訣をインタビューした本。
まさにトレーダーのバイブルと言える傑作である。
ちなみに僕はトレーダーではないが、
それぞれの個性がインタビューの受け答えから
強烈に伝わってきて、読み物としてかなり面白かった。
ここに登場するトップトレーダーたちに共通するのは、
リスク管理に対する意識の高さ。
常に最悪のケースに対する備えを怠らない。
「良いトレードの要素とは、
(1)に損切り、(2)に損切り、そして(3)に損切りだ。
もし、この三つの法則に従うなら、
誰にでもチャンスはめぐってくる。」
(エド・スィコータ)
「常に最悪のケースとするポイントを決めておくべきだろう。
唯一の選択はそれより早く手じまうべきかどうかということだ。」
(リチャード・デニス)
「トレードにおいて最も重要なルールは、
巧みな攻撃ではなく防御だ。」
(ポール・チューダー・ジョーンズ)
「報酬は計量化できないが、
リスクは計量化できるというのは真実なんだ。」
(ラリー・ハイト)
「進んで損切り出来ないのなら、株はやめた方がいいな。
ブレーキのない車を運転するのかね。」
(ウィリアム・オニール)
「いつでも損切りは早い。それが成功のカギだと思う。」
(マーティ・シュワルツ)
損切りとは、損が出ている状態で自分が持っている
ポジションを手じまい、損失を確定してしまうこと。
つまり、「自分の間違いを認めてしまう」行為だ。
これが、一般のトレーダーにはなかなかできない。
自分のポジションがどんどん値下がりしだしたとき、
「いや、いつかは上がるだろう」
「トントンまで戻したら手じまおう」
「いま手じまったら損失が確定してしまう」
などと考えているうちに、損失はさらに拡大し、
いつのまにか手におえないほどの大きさになってしまうのである。
「続けること」を美徳とし、
途中であきらめることや失敗することに対して
寛容とは言えない日本人にとって、
この「損切り」という概念はなおさら
理解しにくいものなのかもしれない。
トップトレーダーたちは、
「自分の間違いを認める」という精神的に非常に苦しい行為を、
厳格な「自己規律」によって実践しているのである。
ところで、この「損切りは素早く」という概念は、
トレード以外にも応用することができると思う。
例えばビジネス。
成功している経営者のほとんどは、
過去に多くの事業で失敗している。
失敗し、あきらめ、間違いを認めた上で、
次のビジネスチャンスを探す。
これを何度もくり返し、そして数少ない
うまくいったビジネスを大きく伸ばすことで、
現在の成功を手にしているのである。
うまくいかないものは早く見切りをつけ、
うまくいったものにはここぞとばかりに精力をつぎ込む。
これはまさにトレードの成功法則と重なる部分と言えるだろう。
他にも、「苦手なことには目をつぶり、得意なことを伸ばしてあげる」
という教育法にも「損切り」の概念に共通するものがあるかもしれない。
また「損切り」以外にも、トップトレーダーの言葉には
経営論や組織論に通じるものがある。
「一番重要なことは、もし大きなトレンドがあるならば、
そのアプローチによって確実にトレンドに
乗っていなければならないということだ。」
「分散ということを考えなくてはならない。
もし一つの方法で、あるいは一人の人間が
全ての決断を下していたら、大きな資金は運用できない。
しかし、もしいくつか違う戦略を採用し、
判断する人が分散していれば、おおきな問題なしに
数億ドルの資金の運用ができる。」
(リチャード・デニス)
この本の最後では、トレーダーの心理を研究した
心理学の博士にインタビューを行っている。
成功者の共通点を見事に言い当てた彼の言葉を、
最後の締めくくりにしたい。
「私達は通常成功することしか頭にありませんが、
『損をすることは成功するためのコストである』
と考えを改めなくてはなりません。」
「別の決定ができるということは、
すなわち結果を変えることができるということです。」
(Dr・バン・K・タープ)
満足度
★★★★★