【智多星・呉用】第二章 第一話~第五話 | andante cantabileーまなみんの別カレ日記ー

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攻略記事を検索して来られた方は、「徒然日記」の「!注意!」という記事に目を通してください!!

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※ネタバレ!!

※ヒロインの名前は「原郁里」ちゃんです!!


※今回から試験的に神視点にしてみます!!




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剣を目の前に差し出され、郁里は戸惑うばかりだった。






郁里「どう、しろと・・・・・・」


宋江「剣を、手にとって」






ニコニコとしながら、剣の柄を握るように、と突き出す。


にこやかで物腰柔らかだけれど・・・宋江には有無を言わせないような空気があった。


郁里は仕方なしにおずおずと剣を取る。






宋江「史進(シシン)が相手をするから」


史進「・・・・・・」






郁里の正面に一人の男性が立つ。






史進「おい、抜け。・・・・・・戦えないだろう」


郁里「え・・・あ、は、はい・・・」






鞘から剣を抜け、という意味を理解するまで数秒かかる。


鋭い刃先が、太陽の光に反射した。






(剣って、こんなに重いんだ・・・・・・)






剣先が重さのせいでぐらぐらと揺れる。






史進「・・・・・・行くぞ」






史進が一歩踏み出したときだった。






呉用「お待ちください」






呉用の声が響き、郁里の前に立つ。






宋江「ほう・・・・・・なんだい」


呉用「この女は剣の握り方も知らない様子。史進と対峙するまでもありません。時間の無駄です」






呉用はそう言うと、郁里の手から剣を奪った。






宋江「ふふふ。立ち会いを止めるのは林冲あたりの役割だと思っていたが、あてが外れたよ」


呉用「・・・・・・」


宋江「郁里さん、貴女が剣すら持てないことは、今のでわかった。試すような真似をして済まなかったね」


郁里「い、いえ・・・」


宋江「今日は、部屋に戻ってのんびりしているといい」






そう言うと、宋江は林冲や史進たちと共にその場を去っていった。






郁里「・・・どういう、ことですか」


呉用「君が間者、もしくは宋江様の命を狙う者なら、この好機は逃さない。剣を握らされたら、後のことなど考えず宋江様を殺すことを試みるだろう」




(そんな・・・殺すだなんて・・・・・・)




呉用「しかし、君はどう見ても剣を握ったことはない。剣を持つ手もずっと震えていた」




(・・・見られていた・・・・・・)




呉用「全く・・・あの方も、無茶をなさる・・・。いや、それだけ皆を、信じていらっしゃった、というわけか。・・・・・・私には、それが足りぬ






呉用がため息交じりにつぶやく。


どういう意味かを考える余裕すらなく、郁里はその場にペタリと座り込んでしまった。






呉用「・・・・・・大丈夫か」


郁里「こ・・・・・・怖かった・・・・・・」


呉用「・・・・・・・・」






呉用が少し、目を見開いた。






呉用「怖かった・・・・・・?」


郁里「剣を持ったのなんて、初めてで・・・刃物を向けられるなんて経験も無いから・・・・・・」






切れ味のよさそうな剣をつきつけられて、完全に足がすくんだのだった。






(震えが・・・・・・)






呉用「・・・・・・そうか」






呉用はそう言うと、郁里の隣に座った。






郁里「呉用さん・・・・・・?」


呉用「・・・刃物をそこまで怖がる者を、私は知らない」


郁里「え・・・・・・」


呉用「だから、君の恐怖も、理解しがたい」


郁里「・・・・・・」


呉用「だが、君に恐怖を与えたのは私の責任だ。だから、和らぐまでそばにいようと思う」


郁里「・・・・・はぁ」




(変な人・・・・・・でも・・・・・・不器用な気遣い・・・・・・)






冷たい表情の奥底に、呉用の本当の優しさが隠れていて、それがちょっと顔を出したのだろうか。


呉用と並んで座っていると、郁里は不思議と落ち着いてきた。






呉用「本当に間者ではないようだな」


郁里「間者、とか、命を狙うとか・・・何のことだか、さっぱり・・・」


呉用「その言葉に嘘がないこと、信じよう」






それから、郁里の顔を見つめる。






呉用「それにしても、なぜ、君はここに来たのか。目的は一体なんなのか」


郁里「・・・分かりません」


呉用「記憶を失った、という訳ではないのだな?」


郁里「はい、元いた世界のこともしっかりと覚えています」


呉用「きっと、君が来たことには理由がある」




(・・・・・・)




呉用「誰かの・・・・・・ため、かも知れぬ」






小さく、呟くように呉用は言った。


郁里の素性を本気で詮索しているようでもなく、彼女の気持ちが落ち着くのをゆっくり待っている、そんな感じだった。






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ーーどのぐらい、そうやって、座っていただろうか。


呉用は郁里の様子を見て、ゆっくりと立ち上がった。






呉用「そろそろ、戻ろうか」


郁里「・・・・・・はい」






先に呉用が立ち上がり、郁里もそれに続こうとしたそのとき。


・・・・・・おずおずと郁里の目の前に手が差し出された。






(え・・・・・・)






見ると、呉用の顔はわずかに赤くなっていた。






呉用「・・・・・・立ちづらいかと思ったんだが」


郁里「・・・・・・ありがとうございます」






そっと呉用の手を取り、立ち上がる。


すぐに手は離されたけれど・・・・・・郁里の心の中には何か温かいものが広がっていくようだった。






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二人が部屋に戻る道すがら。


やけに騒がしい屋敷の前を通り過ぎようとしていた。






阮小五「あっ、先生!」






阮小五が二人を見つけて走ってきた。






呉用「・・・・・・何があった」


阮小五「実は・・・間者を捕まえまして」


呉用「何だと?」


阮小五「宋江さまの部屋に忍び込んだところを、林冲さんと宋江さまに見つかったんです」


呉用「どこの間者だ?」


阮小五「それはまだこれから・・・」


呉用「分かった。私も後から向かおう」






阮小五が軽く頭を下げて、その場を去っていった。


呉用は小さく息をついて、再び歩き出す。






郁里「あの、間者って・・・?」


呉用「梁山泊の弱味を握ろうとしているものがいるということだ」


郁里「梁山泊は誰かに狙われている、ということですか?」


呉用「何をのんきな・・・君もその間者の一人と疑われていたのだ。梁山泊をつぶそうというものが数多くいることくらい、憶測できるだろう」




(言われてみればそうか・・・)




呉用「頭は使え。使わぬ頭は、ただの肉の塊だ」




(そこまで言わなくても!・・・でも、梁山泊って・・・・・・一体、どういう場所なの?)






郁里が疑問に思ったその時。




近くの部屋から、うめき声が聞こえた。






(今のは・・・・・・?)






なんとはなしに覗き込もうとした郁里を、呉用が後ろから抱きとめ、目をふさいだ。




郁里「んっ・・・あ・・・・・・・・・・っ!」


呉用「だまれ。耳もふさいでおけ」


郁里「え・・・・・・」






郁里はよくわからないまま、言われたとおり耳をふさぎ、その場を移動する。


少し離れたところまで来て、ようやく体が解放された。






郁里「一体、何を・・・・・・」






そう問いかけようとしたとき、遠くから身の毛がよだつような叫び声が聞こえてきた。






(今のって、私たちが来た方向から響いてきたよね・・・・・・)






呉用を見ると、複雑そうに表情を歪めている。






呉用「・・・間者が尋問を受けているんだ」


郁里「尋問・・・」


呉用「君が受けたような、生やさしいものではない」






絶命してしまいそうな叫び声が、断続的に続く。


郁里はそれで全てを察した。






呉用「・・・女が見るものではない」




(それで目をふさいでくれたの・・・・・・?)




<選択肢>


1:ありがとうございます


2:平気なのに


3:優しいんですね←5UPアップ




郁里「優しいんですね、呉用さんって」


呉用「・・・き、君のためではない。”どんな理由があっても暴力はダメ”などと騒がれても面倒なだけだからな!」


郁里「それでも・・・優しいです」


呉用「・・・・・・ふん。女は扱いづらい・・・・・・」






口ではそっけなく言っているものの、呉用の頬はわずかに赤くなっているのだった・・・・・・






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呉用の部屋に戻ってきた二人。


郁里は早速、書物を手にとりながら尋ねる。






郁里「書物の整理の続きをすればいいですか?」


呉用「いや・・・・・・その前に」






呉用は郁里を座らせると、何かを探し始めた。






呉用「・・・・・・これだ」






そう言って呉用が差し出したのは、短剣だった。






郁里「これは・・・・・・」


呉用「護身用に常に身につけておくといい」


郁里「えっ・・・・・・」


呉用「梁山泊内は安全が確保されている・・・と言いたいところだが、間者が入り込んでいるような状態だ。いつ、危険にさらされるか分からない」


郁里「でも、使えるかどうか・・・」


呉用「何も考えるな。危険を感じたら鞘を払い、相手に向かって突き出せ」






郁里は短剣を受け取った。






(包丁くらいの大きさなのに、ずっしりとした、怖い重み・・・・・・)






短剣は、先ほどの剣ほどではないけれど、やはり人を刺すためのものだ。






(自分がこんなものを手にするなんて、思いもしなかった・・・)




呉用「どうした」


郁里「いえ・・・ありがとうございます」


呉用「・・・何か不安でもあるのか?」






郁里は、今の自分の気持ちをどうしたら呉用に理解してもらえるか考えた。






(そうだ、なら、彼の立場に立って、私のことを伝えてみよう)






郁里「ええとですね・・・・・・私は今まで、武器を持たなくていい社会にいました。だから、誰かを傷つけるかもしれないものを、こうして持つと、恵まれたところに住んでいたんだなって思って・・・」


呉用「・・・帰りたいか」


郁里「・・・もちろん」


呉用「・・・だろうな。だが、そのためにも君はここで生き延びねばならない。その剣は、帰るためのおまじないだとでも思っておけ」


郁里「おまじない、ですか。・・・・・・そうですね、そう思っておきます」


呉用「ああ」


郁里「・・・・・・本当は」


呉用「ん?」


郁里「この世界も、武器を持たなくて済む社会になると・・・住みやすいのにな」


呉用「・・・・・・」






郁里の言葉に、呉用が複雑そうな表情を浮かべた。






郁里「あ、ごめんなさい。変なことを言いました。忘れてください」


呉用「いや・・・・・・」






呉用はその後もずっと、複雑そうな顔をしていた。


その悩み多い青年の顔を横目に、郁里は書庫の整理を黙々と手伝い続けるのだった。






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あれから、数日が経とうとしていた。


一体ここが、どんな場所でどうして自分はここに来てしまったのか・・・


郁里には相変わらず分からない。


分かっていることといえば・・・






呉用「・・・どうかしたのか?」


郁里「え・・・・・・」


呉用「先ほどから、手が止まっている」


郁里「あっ・・・ごめんなさい!」






書きものをしていた呉用に注意されて、郁里は慌てて手を動かし始めた。


文机に向かったまま、呉用が尋ねてきた。






呉用「何か・・・気になることでも?」




(最近、はっきりと分かったこと。少し、呉用さんが優しくなったこと。そのせいか・・・彼の背中が・・・ちょっと気になる)




呉用「疲れたのだろう。茶を淹れようか」


郁里「あ、なら私が淹れます」


呉用「私がやる。座りなさい。菓子も用意しよう」


郁里「は・・・・・・はい」






そう言って呉用が奥の部屋に立つ。






(毎日、必ず一回はこうしてお茶の時間を作ってくれる。私・・・それが、少し楽しみになっている・・・・・・)




郁里「あの、お茶くらい私だってできます」


呉用「知っている」






奥の部屋から声だけがする。






郁里「なら・・・・・・」


呉用「やらせてくれ。私にとっても、いい気分転換になっているのだ」




(えっ・・・どういう意味・・・・・・?)






何気ない一言に、郁里はなぜか心臓がドキドキしてくる。


姿を見せない呉用に向かって、郁里は緊張を隠すように関係ない話を振ってみた。






郁里「呉用さん」


呉用「なんだ」


郁里「梁山泊って、何をする集団なんですか?」


呉用「・・・・・・・・」


郁里「ただの乱暴な人たちの集まり、ってわけでもなさそうですし、宋江さんを中心に、いくつもの部署が連携して上手に組織を運営しているようですし・・・・・・」






奥の部屋から、顔だけ見せる呉用。






呉用「そこまで気づいているなら、話してもいいだろう」






そう言って、お茶とお菓子をお盆に乗せて、机の前に座った。






呉用「・・・我々は今、国を正そうとしている」


郁里「国・・・?」


呉用「この宋という国は長年の膿を孕み、腐敗してしまった。それを正常な状態に戻したいと願ったものが、この山に集ったのだ」




(宋・・・・・・ここは・・・私の世界で言う、中国のこと?)




郁里「国を、武力で正すんですよね」


呉用「ああ」


郁里「ということは・・・革命ということですか?」


呉用「革命・・・そうだな、そう考えてもかまわない」






呉用は話を続ける。




呉用「新しく住みよい国をつくる。梁山泊はその足がかりだ」


郁里「呉用さんが良い国を作る、ということですか?」


呉用「私が・・・?いや、私は誰かの補佐でよい」


郁里「どうして?理想があるなら自分の手でって思うんじゃないかな」


呉用「・・・私には人望がない」




(人望?)




呉用「私などより素晴らしき人格者が指導者になればいいのだ。よき指導者がいれば、国は必ず良い方向へと向かう」


郁里「例えば、宋江さんとか、ですか」


呉用「あの方も、もちろん素晴らしい指導者だ」






そう話す呉用。でも、不意にその表情が苦しげなものにゆがんだ。






呉用「私は・・・一度、指導者となるであろう方を、殺してしまった」


郁里「え・・・・・・」




(殺した、って・・・・・・)






呉用は表情を殺していたが・・・・・・目は悲しげだった。






(この人は、何かを背負って生きているんだ・・・)






郁里は呉用から目が離せなかった。


不意に、呉用も郁里を見つめる。


視線が絡み合い・・・・・・






戴宗「・・・っと、英雄は好機に登場!ってな。相変わらずお熱いことで、お二人さん」


郁里「た、戴宗さん!?」


戴宗「よお、子猫ちゃん。この朴念仁に接吻くらいはさせてやったかい


郁里「な、な、そんなわけ・・・・・・!」


呉用「・・・何用だ、戴宗」




呉用が冷静に返す。






戴宗「邪魔されたぐらいで機嫌を損ねるなよ。大人げないぜ」


呉用「・・・・・・無駄話をしに来たわけではないだろう」


戴宗「いやだねぇ、せっかちは」


呉用「お前が冗長なのだ」


戴宗「実は・・・まずい情報が入った。例の間者がどこの手の者か分かった」


呉用「・・・想像の範疇か?」


戴宗「おそらく、な」


呉用「ふむ・・・・・・」






呉用の真剣な表情を見て、郁里は無意識に短剣の位置を確認していた。






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やっぱ完レポのがラクかな(笑)




今回は、呉用さんがヒロインちゃんに短剣を渡すところで萌えました。


なんか、深いというか・・・現代に生きてると、「生き延びる」なんてシチュエーションに出会わないからね。呉用さんの一言一言が、なんだか心に残りました。




やっぱイイよ、このアプリ!!




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