~ 朝起きできない慢性疲労症候群 ~

 

 自律神経緊張が続き副交感神経が弱くなって、体を休める力が落ちてくると、眠りにつく時間がどうしても遅くなる。おまけに睡眠中の脳温がオーバーヒートしてしまっていることが明らかになっている。さらに眠るためのホルモン(メラトニン)は時間どおりに分泌されず、起きて活動するためのホルモン(コルチゾール)が朝にはなかなか出てこない。

眠りは浅く、しばしば目がさめる。

 このような睡眠では、十分な中枢神経の休養はとることはできない。ヒトの本来の睡眠覚醒リズムは24.18時間であることが知られているが、生命力が強い状態では24時間にリセットできる。これまで医学的に証明してきたように慢性疲労症候群では生命の脳および高次脳機能ともにその働きはしだいに低下して、毎日の時計設定ができない状態となる。

 自律神経も、ホルモン分泌も、脳温設定も混乱してしまった慢性疲労症候群では、睡眠覚醒の周期は24時間をこえてしまい、生活時間と社会活動時間に微妙なずれが生じはじめ、しだいにそのずれが大きくなっていく。慢性的な時差ボケ同様の生活となり、すっきりした精神・身体活動ができず、社会生活を断念すると同時に非常に長い睡眠時間(平均10時間)が訪れる。起きる時間は遅くなり、活動に向けての心身の準備が整う時間は午後になってしまう。

 社会活動時間である朝は、彼らにとって真夜中となる。しばらくの間は気合で朝起きをがんばることができるが、そのがんばりも長くは続かない。ついには家族からどのように揺り動かされても反応さえしなくなって眠り続ける。

学校や社会の時間に合わせて彼らを無理に起こす行為はむしろ有害であり、彼らの健康状態を改善させることができない。無理に起こさず、10時間の睡眠時間を確保しなければならない。

(三池輝久著『「学校」が生きる力を奪う』より)

 

 

 

2024.3.4