新国立劇場『20の物語』 「不毛ドライブ」「マクベス」 | 気のむくままに

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新国立劇場「20の物語」から、『不毛ドライブ』と『マクベス』を観てきました。
全くタイプの違う2作品でしたが、どちらも面白かったです。


『不毛ドライブ』


【作・演出】蓬莱竜太  

【出演】濱仲太 関口アナン


30分という短い作品なのに、そこに詰め込まれた情報量と脚本の巧みさに驚きました。
居酒屋でアルバイトをする年下の先輩と後輩の男二人。
先輩に呼び出され、車を走らせる後輩。

最初は、先輩の執拗な絡み方に苛立つ後輩。二人の間にある微妙な距離感や違和感が少しずつ浮かび上がってきます。
そこに恋愛が絡み、空気はさらに不穏になっていく。

そして迎える幕切れ。
先輩の身に起こったことを、後輩は知らない。
でも観客には見えている。
後輩には見えない刺し傷から流れる血が、観客だけに示される。
舞台上の人物(後輩)と観客の知っている情報の差が、最後の瞬間まで緊張感を保っていました。

何気ない会話の中に少しずつ違和感を積み重ね、短い時間で人物関係と物語を成立させる脚本、面白かったです。


『マクベス』

【演出】鵜山仁

【出演】岡本健一(マクベス マクダフ マルカム)

中嶋朋子(マクベス夫人 マクダフ夫人 使者)

木下浩之(ダンカン ロス バンクォーター 医師 使者)

一柳みる(魔女 ロス アンガス 暗殺者 貴族 レノックス マクダフ息子 シーワード)


鵜山仁さん演出のシェイクスピアシリーズをずっと観てきたので、今回楽しみにしていました。

リーディング公演ということで、正直どんな舞台になるのかと思っていましたが、こんなリーディングは初めてでした。

舞台上には4脚の椅子、2つの王冠、そして中央を結んだように吊られた一枚の布。
最小限の舞台装置なのに、それがとても豊かに世界を作っていました。
特に印象に残ったのは、その布の使い方。幕にもなったり、上下にまったりもする。
場面をつなぎ、空気を変える。
照明の使い方や、客席を巻き込む演出も素晴らしく、想像力を刺激される舞台でした。

そして何より、4人の俳優の力。
台本を手にしているリーディングという形式でありながら、そこにはマクベスの世界がありました。

1人何役も演じる役者さん。役の切り替えの鮮やかさ、一人ひとりの人物の立ち上げ方に圧倒されました。
岡本さんのマクベス。マクダフも兼ね1人で殺しあうところは見応えありましたし、欲と恐怖に飲み込まれていく過程、孤独になっていく様が感じられました。岡本さんのマクベス観てみたいなあ。

中嶋さんのマクベス夫人。単なる悪女でなく、危うさが印象的でした。2人の関係性は何作も共演しているだけあってとてもしっくり。
2人だけでなく4人全員が素晴らしかったです。

途中、リーディングならではの、台本を覗きこむ、笑いが生まれる場面がありました。
その日は偶然のハプニングなのかと思ったのですが、別の日にもあったと知り、これも計算された演出なのかと驚きました。

決められた形の中にも、その瞬間の呼吸がある、
生の舞台ならではの魅力ですね。

『ヘンリーシリーズ』『リチャード三世』『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』など、これまで鵜山さんのシェイクスピア作品を観てきましたが、今回の『マクベス』もまた心に残る作品になりました。
大きな装置がなくても、俳優の身体と言葉、演出の力でここまで世界を作れるのですね。

『不毛ドライブ』では脚本の緻密さに驚き、
『マクベス』ではリーディングから、演劇そのものの力を感じた一日でした。