一色洋平×小沢道成『漸近線、重なれ』Presented by EPOCH MAN | 気のむくままに

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観劇日記の様になってますが、気になりましたら、読んで頂けますと嬉しいです。

マイペースに更新しております。

【演出・美術】小沢 道成  一色 洋平
【脚本】須貝 英
【音楽】オレノグラフィティ

タイトルの漸近線とは、進めば進むほど近付くけど、決して交わらない線のこと。
ただし同じ平面上に存在する。
交わらなくても孤独じゃない、その距離感の優しさが素敵だなあと感じた優しい作品。

そして、今は離れた場所にいる線上の君にいつか逢いにいく、だから漸近線、重なれ。
良かったよー。ほんと素敵な作品でした。

劇場に入ると、ちょっと驚きます。このセットでどう演技するの?とわくわく。
ヤオヤに組んだ板の屋根、そこに、大小形も違う窓が空いている。照明があたるととても綺麗で、小沢さんの作品の美術は、今回も美しく作品の世界観が表れていました。
とあるアパート(の屋根)。中央の大きい窓から、26歳の青年、僕が顔をだす。僕は窓から上半身を出して、時に出てきて屋根の上を歩いて演技をします。

次々と他の窓が空いて、アパートの他の住人、大家さんが登場します。僕とアパートに住んでいる他者との、つかず離れずの交流。

アパートの様々な人との出会いから、別れまでが1人1人描かれていました。出会いも別れ方も様々です。
屋根の下には、様々な住人が住んでいて、其々の生活、人生があるんだなあと感じます。


又、中央の窓からほぼ動かない僕が、アパートの住人と関わり、郷里にいる高校時代の君との手紙のやりとり、郷里の母や幼なじみとの電話を通し、歩き始めるまでの物語でもあります。
前半は笑いが多く、後半は涙しそうになるのですが、どこの瞬間も優しさを感じます。


人形を使った芝居もあり、小道具も木の温もりを感じる拘りぬいた品々。

大家さんは人形を動かし→小沢さん自身。話し方とかもあるけど、愛らしい人形の動きは大家さんがとても親しみのある人に感じ、そこからの大家さんとの別れは涙です。大家さんを送り出す時の、僕の一色さんの演奏と歌がまた素敵で。この演奏がトイピアノというのがなんともいえず優しさを感じます。

出てくる他の人も魅力的でした。

主となる軸は、手紙で結婚すると知らせてきた高校時代の友人とのやりとり。この年齢で高校時代を思いだすには心がきりきりするそんな歳ですよね。

彼とのやりとりもだけど、反復したくなる言葉がいくつもあって、

中でも僕と母との電話での話。

高校卒業の時、友人と卒業旅行に行くと言って出かけたけど、実は1人旅で死のうと思っていたと告白します。

その時の母は、さらっと質問しながら、僕の人との距離の思いを聞き、最後にひとつお願いをしていい?と。一言「私を看取って欲しい」との言葉にはっとしました。これ以上の言葉はないんじゃないかな。

今思い出しても心がドキドキします。

言葉を反復したくて台本を久しぶりに買いました。

僕を一色洋平さんが、他の役(13役らしい)を小沢道成が演じる2人芝居です。


パンフレットも2人の対談から制作過程がわかる嬉しい内容でした。