【脚本】畑澤聖悟
【演出】日澤雄介
【出演】山口馬木也、川島海荷、池岡亮介、川田希、小日向春平、森下亮(クロムモリブデン)、堤千穂(演劇ユニット鵺的)、三原一太(はらぺこペンギン!)、水野小論(ナイロン100°C)、内田健介、安川摩吏紗、阿岐之将一、大部恵理子、神野幹暁、花岡すみれ、保坂エマ
畑澤聖悟さんが2010年に昴座に書き下ろした脚本を、日澤雄介さんが今回演出。2010年、2013年?に上演されている脚本との事、今もこうやって上演されるのは嬉しいと畑澤さんがおっしゃってました。
原子爆弾開発に従事した科学者ブライアン・ウッドを中心に、日本に落とされた原爆を作り上げた5人の男たちとその家族の65年です。
1945年、ブライアン25歳、彼らは様々な立場で原爆の開発に関わり実験は成功し喜ぶ。
そして、日本への原爆の投下で、戦争を終わらせた英雄となったそうです。
アメリカ第二次世界大戦後、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争と、戦地へ若者を送り続けたアメリカ人の歴史をこの5人の家族と共に。
アメリカ側から見た原爆についての視点を、日本人の脚本家が書き、日本人キャストで演じるのですが、原爆を正義だという考えが基本的にあります。
日澤さんの話で、役者には、日本人として身体がその言葉を拒否する負荷があったと。
アメリカ側からの視点で観たのは私も初めてで、たしかに驚き怒りがわきます。
特に驚いた言葉は
原爆を落としたことで、日本との戦争は終わったんだ、彼らは本土上陸で100万人の米兵が死ぬのを救った英雄なんだ。
日本は女性もこどもも軍事工場で働いていたからまるごと破壊してもいい。
又、原爆ドームを観たアメリカ人こ女性が、気持ち悪い被害者ずらして。被害者の部分だけ展示するのでなく、日本人が加害者である真珠湾攻撃(だったかな?)も並べて展示するべきだと。(ニュアンスです)
でも戦争って実際こんな考えだから、今も終わらないのだろうと思いました。
今も終わらない戦争に、今又上演する意味のある作品だと思いました。
アメリカ側からの視点は、日本人を馬鹿にした言葉も多い。しかしよく書いたと思う。
ブライアンには息子がいて、父の様に英雄になりたいと、両親の反対を押し切り海兵隊に入る。ベトナム戦争に行くが、若くしてPTRDに苦しみ一生車椅子生活となる。
研究仲間のやっとできた息子は、イランイラク戦争に行き、帰還したが突然の死を迎える。化学兵器の影響かと思われる。
ヘルパーの女性のウラン発掘によるナホバ族の被爆問題を聞いたとき。
身近な人の苦しみ、数々の幸せとは遠い事実を聞いて少しずつ考え方は変化したのだろうか?
20万人を一瞬にして殺した、彼なりの思いはあったようでしたが。
ブライアンの娘は、被爆2世と結婚して、日本人との架け橋の存在となります。ここは唯一救いだったかなと思います。
この日はアフタートークつきでした。
脚本の畑澤聖悟さん、演出の日澤雄介さんのお話をキャスト川田希さんの司会で聞けました。
脚本、演出からの話が聞けたのは興味深かったです。
畑澤さんが、番組名は忘れてしまいましたが、原爆を作った方がsorry(気の毒に思う)とは言ったがapology(すまない)は言わなかったということに驚いたという事を話していました。
この言葉は作品に取り入れられています。
日澤さんの話から、舞台セットは、ウクライナや特にガザことがあり、(終わらないんだ、終わらせられないんだ)廃墟の様なセットにしたと。
又飲むもの食べものも、役者に負荷がかかるようにしたと。飲み物は米を黒く染めたもの、ピーナッツは銃弾だし、クッキーは歯車、バーベキューで焼いた食べ物はビン等。
人が食べられない物、生きるということに繋がらないし、食べ物が美味しそうに見えない、この事は誰も幸せにならないという印象を強く残しました。
後、花火の音は銃弾に近い音。
イノセントピープルとは無実の人という意味。
そう思わないと生きていけなかったのか。
観た後に、色々考えてしまう作品でした。