原作はカズオイシグロ。
タイトルは「日の名残り」
久しぶりに見てみようと思った矢先のノーベル賞受賞、途端に蔦屋では特集か組まれすぐにレンタル中に。
ここ一月くらいは借りれんかなと悔しい思いを抱きつつ過ごした一週間、早々と借りることができた!
俺の日頃の行いが良かったのか、それとも過熱も早いが飽きるのも早い日本人の習性のなせる技か?

まあとにかく何回見ても、なきますわー。
俺はもう50前やけどね、まだ涙が残ってたんかと思うくらい。
だいたい話が淡々としてるのがよろしいわ。
内容自体が、いわゆるラブストーリーにも関わらず。
それに、日の名残りの題名の通り、人生の黄昏時の話で、成就されない恋の話なんですな。

登場はアンソニーハプキンス演じるスティーブンソン、エマトンプソン演じるミス.ケントン。
舞台は1930年代のイギリスのダールトン卿という貴族のお屋敷。
その中で、二人は執事と女中頭という役割で、邸を取り仕切ってるんです。

貴族とは言っても普通の貴族じゃありません。
当時のヨーロッパ、第一次世界大戦から10年、ナチスが台頭し、ドイツの再軍備が問題になっていた頃のこと。
ヨーロッパの中にもドイツ擁護派と反対派があるわけで。
ダールトン卿はドイツに古き良き友人がいて、ドイツに復活して欲しいと願ってる派。
性善説で、ドイツの再軍備はヨーロッパの復興と平和維持の為必要と思っていて、自分の邸宅で、ヨーロッパの名士を招いて、ドイツの将来を話し合う国際会議を開きはるんです。
まぁこれが後々えらいことになるわけですが、それは後の話。

そんな家柄なので、家を取り仕切るスティーブンスとしては、踏ん張らなあかんわけです。
彼はプロフェッショナルに徹して、私情を挟みません。
どういうんだろ、我々勤め人の場合、職場と家は違う場所にあるわけで、それなりに気を抜ける時間は多々あるわけやけど、執事ちゅうのは年がら年中お屋敷にいるわけで、執事そのものが全人格になってしまうわけですね。
彼は言います。「執事として満足できるのは、主人に全てを捧げることができた時だ」的なことを。
またくだんの国際会議にて、彼のおやじ殿、これも元執事、今は副執事が、過労の為倒れてしまいます。彼もプロ、御年75歳にもかかわらず、身体の無理を押して働きたい続けてきたツケが回ってきました。
心配で仕事の合間を縫って様子を見に行くスティーブンス。その彼に、仕事優先しろという父。
そんなこと言われずとも当然というような感じで仕事に戻るスティーブンス。それを満足げに見送る父。
そしてその後、息を引き取ります。
それをケントンに伝えられた彼は、もちろん持ち場を離れることがちきないんですわ。
彼は肉親でもないケントンに、父の瞼を閉じて欲しいと願う、とこうなるわけです。
この辺りが国際会議の宥和的だが、厳粛な雰囲気と絡めながら、静かな緊張感を持って描かれていき、見せ場となるわけですわ。

そして、ケントンとの関係。
父の死のエピソードからも、スティーブンスのケントンに対する信頼は大きいということがわかります。それは恋愛感情と組みつ、縺れつで描かれていきます。

カズオイシグロはんが日本的というのはこの辺でっしゃろな。
屋敷と主人の威厳を守るため、自分の私情を封印するスティーブンス。それと相反するように自分の中に芽生える恋愛感情。
いやーこまりましたねー。

彼が思うだけならいいのですが、ケントンもスティーブンスを好きになってしまうんですわ。
ほんまこまりますよねー。

夜の時間は少し余裕があって、時々スティーブンの部屋で、翌日の仕事の打ち合わせがてら、お酒入りの歓談があったり、ということもあるわけです。
ある時、本を読んでるスティーブンスに、何の本かと尋ねるシーン。
スティーブンスは適当にごまかします。
そうなると余計に気になり、詮索するケントン。
彼女は、スティーブンスに近づき、本を取ろうとするのですが、彼は逃げます。
ついに窓際まで詰め寄ります。
なんかここのところ、いいんですよ!
ケントンの目つきや仕草が少しずつ大胆になってきて、すごいエロティックなんですね。
スティーブンスは、というと、はっきり拒否するわけではなく、何かを隠そうと、でも見つけて欲しいような、微妙な対応をするわけです。
で、なんの本を読んでるかというと、恋愛小説だったという。
彼は言い訳がましく、言葉と教養を身につけるため、あらゆる本を読むのですなんていいだすわけですわ。
ほんま素直やないねー☆
それでケントンに出て行って欲しいと告げるのです。

ケントンとしては、モヤモヤ考えが残りますわな。
女性の方がどちらかというと気持ちが抑えられないようになるんかな。
好きで、向こうも好意を見せてるのに、微妙にすかされる。仕事のためとはわかっていても、心の中ではわだかまる。

ある時、よるの打ち合わせ女性、ケントンが少し疲れてヒスってしまうんです。
彼女としては、スティーブンスに構って欲しいという気持ちもあったのですが、それに対して、おつかれのようだからこれからは夜の打ち合わせはやめよう、会話もできるだけやめてメモでやり取りしようと言い出す始末。
好きになってしまう自分の気持ちにくさびを打つつもりで言ってるのはわかるんやけど、もうちょい素直になれよと言いたくなる。

結局彼女は他の男と結婚して、屋敷を去ってしまいます。
そして20年先の話になります。

この辺は、映画の中では、時々時間軸はオーバーラップしながら描かれてるんですけどね。

20年後、色んなものが移り変わってます。
ダールトン卿は、ナチスを擁護したと世間から冷遇されたまま、亡くなっています。
屋敷の主は、国際会議でも出席してたアメリカ人のルイスに変わってます。(スーパーマンのクリストファーリーブが演じてるのですか、なかなかいい味だしてます)
執事は相変わらずスティーブンス。
人手不足解消と、ケントンが再び働いきたい意向の手紙が来て、ルイスからもたまには休めよの言葉もあり、ケントンに逢いに行きます。

再び一緒に働けると思うとワクワクしますよねー☆
で、再会を楽しみます。カフェでお茶をしたり、港のベンチで夕焼けを見たり。
でも運命って不思議、かつ残酷ですね。
ケントンの娘に赤ちゃんが生まれ、ケントンに新たな目的ができてしまうんです。
ラスト近く、バスに乗るケントンを見送りながら、スティーブンスは言います。
お幸せに。あなたと会うことはもう一生ないでしょう…。
ケントンを思うからこそ言えた一言やね。
その後、彼は屋敷に戻り、執事としての日常を淡々とこなします。
彼の心の中に残る物にそっとふたをして。