あぶさんの最終回に寄せて。(1/4) | まぶたはともだち

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最近はプロ野球もお熱です。

こんばんは。
先日、完全に死んでいたこのブログをどうしても動かさざるをえない感じるほどの、すさまじい動機付けとなるビッグニュースがありました。

それは何をかくそう、あぶさんの完結です。

(ニッカンスポーツ12月19日朝刊より)

このニュースをツイッターで観たとき、とりあえずこのニュースの意味を深く考えることをやめました。しかし、ビッグコミックオリジナルを立ち読みしているボクは、直接現実を目の当たりにせざるをえないのでした。
いかに自分の頭が悪くとも、あぶさんがまもなく終わるということを、理解せずにはいられませんでした。

あぶさんこと、景浦安武。背番号90。

26歳、ドラフト外で南海ホークスに遅い入団。代打屋として20年、チームの4番として16年。三年連続三冠王、ホームラン56号、打率4割、そして何より62歳まで現役36年という、誰も超えることの出来ない成績を刻んできました。
自分はその全てを一つも見逃すことなく、この目で追ってきました。連載は41年、976回に及びました。あと1年連載を続ければ、連載1000回だったのですが。
41年前といえば、1973年。巨人がV9を果たした年です。長島茂雄はまだ現役(37歳、74年引退)、王貞治は全盛期(33歳、80年引退)です。ボクのオカンはまだ小学生。恐ろしいほど長いことやってきたのです。果たして最初から最後まで、リアルタイムで読み続けた人間はどれほどいるのでしょうか。

コミックスは、現在105巻まで出ております。2月末に106巻、そして、3月に最終107巻が出るのだとか。
正直に言います。はっきり言って、47巻の最初の話で1991年のシーズンを前にあぶさんが突然「今年は三冠王を狙ってみる」と言い出した、あの回からは読まなくていいです。もっと言うと、20巻前後から代打屋なのに普通にスター選手として扱われ始めた辺りから”劣化”は始まっていました。その辺までは本当に、渋くて文化史的な価値もある、素晴らしい作品でした。

90年代に入って「酒びたりの体質がたたって代打しか出来ない」という設定を放棄し、不動の4番として実在の選手をガンガンかませ犬にして「やっぱりあぶさんはすごい」と言わせまくっていたのも、時代の流れであり、ある意味別種の面白さがあったように思います。
ただ90巻を過ぎた辺りから極端に画力が衰えてきて、同時に構成力も目に見えて落ち込んでいきました。
ボクが読み始めたのは5年前、ちょうどあぶさんが引退する2009年のことでしたが、この頃には商業誌に載せていいレベルじゃないと感じるほどのクオリティでした。


しかしその一方、水島御大はドカベン同様、このマンガを死ぬまで描き続け、ビッグコミックオリジナル編集部もそれを許容してくれるだろうと無意識のうちに思い込んでいました。
今回の連載終了が、編集部の働きかけによるものか、御大の体力やモチベーションの問題か、はたまたドカベンドリームトーナメント編にあぶさんを出すための伏線に過ぎないのかは分かりません。ともかく今はツッコミを入れつつ読んできたこのマンガが、最終回を迎え、自分がこの日まで読み続けてしまったという事実だけです。

なぜ極めてつまらなくなってしまっても、自分は読み続けてしまったのか、それはボクがひとえに作品のファンである以上に、いつの間にか景浦安武というキャラクターそのもののファンになってしまったことが大きいと思います。いつしかあぶさんを架空のキャラクターと深く意識せず、まるでドキュメンタリーを読むような感覚でマンガを読むようになってしまっていました。それほどまでに、連載当初は読者を惹きつける作品であったことは間違いありません。

今でも高2の夏休みに、当時既に90巻以上出ていたあぶさんを一気読みしたときのことを思い出します。他には高校野球を見ていたくらいのインドアな野球漬けの日々でしたが、あれは今までで1番有意義な夏休みのすごし方であったと確信しております。どうしてあぶさんを読もうと思ったのかは、未だに全く思い出せないんですけどね。

(つづく)