普通常識から言えば、


世の為に尽くすとか、

人を幸福にするという事は

善い事に違いありませんから、


賛意を表し

援助をしたくなるのが

真の人間性です。


ところが

不可解にも

甚だ冷淡に振舞う人を良く見受けますが、


そういう人は案外多いようです。


彼らの

偽らざる心情は、


世の為とか

人の為とか

人の事などはどうでもいい、


そんな事は

骨折り損の草臥儲けにすぎない、

すべては自分だ、


自分に利益がある事だけすればいい、

それが一番利口だ、


そうしなければ

金を儲けたり

出世したりする事は不可能だ、

と思っているらしいです。


実はこういう人の方が

かえって利口に見えるものですから、

世の中は可笑しいものです。


この種の人は

自分がどんな苦しみに遭っても

唯物的打算的に考えます。


病気は医者にかかればいい、

面倒臭い事は

法律の力を借りればいい、

言う事を聞かない奴には叱言を言うか

痛い目に遭わせてやればそれでいい、


と甚だ簡単に片付けてしまいます。


又自分さえよければ

人はどうでもいいとする主義ですから、

自分だけが贅沢に耽り、

他を顧みようとしない為

全然徳望などありません。


集まる輩は

利益本位のみですから、

一朝落目になると

みんな離れてしまいます。


勿論こういう人に限って

年中問題や苦情の絶えた事がありません。


終いには

何事もうまく行かなくなり失敗すると、

それを我で挽回しようとして焦り、

無理に無理を重ねますから

いよいよ苦境に陥り、


再び起つ能わざるに至るもので、

こういう例は

世間あまりに多く見受けるところです。


こういう人を称して、

不感症と言います。


konishi.M