小児科便り18号
~長谷川小児科医師の「漢方のお話第2弾!」~
今回も勝手に漢方薬を紹介する第2弾、五苓散を取り上げてみたいと思います。
五苓散といえば、なんといっても、二日酔の救世主(笑)ですが、
他にも妊娠期の浮腫やつわり、小児の急性胃腸炎や、乗り物酔い、頭痛~の中でも特に、気象に影響されるものに効果があると言われていますね。
それぞれ違う病気のようで、どうしてひとつの漢方で治療できるのか、を少し掘り下げてみたいと思います。
傷寒論という中国の古い本等を参照すると、五苓散は太陽経に働いて、身体に溜まった悪い水を排出して、正常な水液に整える作用がありますよ、と書かれています(大幅に意訳かも^^;)
水が多すぎるときには排出を促し、脱水のときには正しい場所に水を保持する、細胞内外液に作用する成分が含まれていると考えられています。即効性もあり、頓服で効果が期待できるのも嬉しいところです。
方剤の中身は、猪苓、澤瀉、白朮、茯苓、桂皮の5つです。
この中で君薬とされているのが澤瀉で、水田や沼地といった水気の多いところに育つ多年草の塊茎です。神農本草経という、これまた古い中国の本の中では、上品(漢方に使われる成分の中でも超グッド👍)に分類されています。水気の多いところで生き抜ける草だからなのか、今回の方剤の中では、とにかく身体の中に溜まった悪い水を排出するのがお役目です。
澤瀉と一緒に配合されることが多い猪苓と茯苓は、マイタケのようなきのこの一種です。今回は、澤瀉の利水作用を増強します。
白朮はキク科の多年草の根茎で、補脾燥湿の要薬と言われ、弱っている消化器系や慢性的な下痢といったものに効果があると言われています。今回は、健脾作用で水はけをアシストします。
桂皮はシナモン。色々な方剤に使われますが、今回はひとつで二役!外側では水が溜まりやすくなってしまった原因を寛解させ、内側では膀胱の働きを助けます(西洋医学の膀胱とは意味が異なりますが)。
こうしてみると、全力で水分量を整える漢方なのかぁ~と、たしかに、むくみに効くこととイメージが繋がりやすいかもしれません。二日酔でも、、、むくみますよね。吐き気やむかむかする症状も、脾の機能が落ちて、体内の水が滞っているためと中医学では考えるようです。
子供の胃腸炎では、感染により気の流れが乱れ、昇降不利になり、水の流れも悪くなる。上がりすぎて嘔吐、下がりすぎて下痢、という状態です。水を飲ませても吐いてしまうという症状が見られる場合、五苓散も適しています。ただし、美味しくはないので・・・飲める子供は少ないのが難点ですが。
頭痛については、中国の古い本にはあまり多くの記載はなく、長年議論されているようです。ですが、雨が降るときの湿度の上昇が体内の水液に影響するのかもしれませんし、やはり水の滞りが頭痛につながっている、と考えると、五苓散の適応もありそうです。
日本は湿度の高い国なので、そう考えると活躍の場も多そうな漢方のひとつです。
最後に、五苓散も白湯で服用することが大切です。汗ばむくらいまで、少しずつ白湯で飲むことができると、より良い効果が得られますよ。