今シリーズの第7回、ついにラストです。
さて、前回までで一通り「頭のてっぺんを上に向ける」ことについて説明しましたので、まずはそれをまとめてみたいと思います。

まず、体を「動作」という面から考えたときに特に大事なのが「首肩」と「腰」であり、この二箇所を重力に逆らわない自然体の姿勢にすることが今回の最重要ポイントでした。

それによりこの二箇所が不自然な姿勢による圧迫や過負荷から解放され、本来の役割に沿った動きをすることで、そうでないときに比べケガ予防、健康促進、スタイル改善、パフォーマンス向上といった様々な効果が表れる=本来の体の機能が十分に発揮されるようになります。

またその補助的な機能として、腰(背骨/腰椎)を曲げて前傾するのはよくあることですがそれは本来の機能ではないので、前傾するときや移動するときは「腰」ではなく「股関節」を使いましょう、ということも述べました。

とはいえ、これらを一つ一つ細かく考えながら日常生活を送るのは大変です。なので、「頭のてっぺんを上に向ける」という一つを意識すれば「首肩」や「腰」も自然とそれに連動するので、その一つだけ、いつでもどこでもできる簡単なことを、意識して日常を過ごしてみてください。

というのが今シリーズの内容でした。まとめてしまうと、えらい短いですね(苦笑)

実は今回の話には「首肩」なら肩甲骨や胸筋、「腰」なら腸腰筋や仙骨などといった箇所が関係しています。ただ、それらは非常に意識的操作がしにくい箇所であり、それをするにはかなりの練習が必要となります。

 

もちろん、それができれば効果は更に上がるのですが、ガチのアスリートでもない限りそれを習得するまでやる人はほとんどいないでしょう。なので、それらの話は今回すべてすっ飛ばしました(笑) そこまでしなくても、「頭のてっぺんを上に向ける」を意識するだけでそれらも連動して動きます。日常生活やちょっとした運動で動きを良くしたいという程度なら、それで十分です。
 

ただ「股関節」の話は運動や体育的なこと全般に効果があるので、学校の体育や部活、クラブなど運動場面が日常的にある人には、普段の練習のときから少し意識して取り組んでほしいなと個人的には思っています。

また、最後まで読んでくださった方に二つ、おまけ的な補足を。

一つは前回(6)のスタイル改善の項で実はサラッと書いていることなのですが、姿勢を正す際に「尾てい骨を下に向ける」を意識すると、更に効果が高まります。

「頭のてっぺん」という頂点と、「尾てい骨」という底辺がそれぞれ上と下に向くことで、頸椎や腰椎を含む背骨全体が上下から引っ張られる形になり、丸まって曲がって潰れがちな体全体を自然に伸ばす効果が更に上がる、というわけです。

 

いわゆる「腰が入っている」と尾てい骨は下を向き、姿勢が悪く「腰が入っていない」と尾てい骨も頭のてっぺんも斜めになります。

 

もう一つは「かかと」で、特に歩くときに「かかと」をしっかり地面に着け、着いたかかとを引くように前に進むと、腰が引けず(抜けず)上体と下肢の連結が上手くいきます。

いわゆる「すり足」に近いのですが、これ、正直意外と難しいです。人間の脚は構造上、「つま先がブレーキ、かかとがアクセル」なのですが、現代人はかかとを使っていないとされるので、ほとんどの人は最初ギクシャクするでしょう。

 

ただ、これにより「頭のてっぺん」と「尾てい骨」、更にその延長として「かかと(までの脚全体)」が一本に繋がり、体の連結と地面への体重&負荷流しがより良く行えるようになります。本当はかかとの使い方だけでまた1シリーズ書きたいくらいなのですが(苦笑)

今回の内容についてのまとめ&補足としては、こんなところでしょうか。


あと、一応うちの教室のブログなので、教室での今回の話の応用について少し。
まず、うちの教室には「膝立ち」という基礎トレがあり、これは毎週行うほど重要視しています。これは私が考案した完全オリジナルメニューなので、たぶん他でやってるところはないと思います。もしちょこっとやっているところがあったとしても、うちほど重要視はしていないでしょう。

マンモス名物「膝立ち」

なぜうちでは「膝立ち」をそれほど重要視するかというと、実はこれ、(4)のパフォーマンス向上と股関節の話で書いた「上体と下肢の連結」のためなのです。腰を曲げると上体と下肢がバラバラになり、動作や出力に大きな無駄が生じます。なので、それを連結させて動くことを習慣化するために行っているわけです。

なお、この「膝立ち」については膝立ちそのものの効果もさることながら、その副産物として生まれた「カード」が私にも想定外だったほどの教育的効果をもたらしているので、いつかこのブログで詳しく紹介したいと思っています。

また、実はこのシリーズを書き始めてからなのですが、柔軟体操に「棒」を取り入れました。
これを足の付け根に当てて行うことで、体を倒す際に「腹(腰)」ではなく「股関節」から曲げて体を使うことを少しでも意識して行えるように、それを習慣化できるようにするためです。そして実際、柔軟の姿勢は棒を使う前より皆良くなりました。


※腹(腰)で曲げるのではなく、足の付け根で曲げることを意識させることが棒の目的。お尻の下にあるピンクの台も骨盤を後傾させないようにするため。

今シリーズを書くために頭を整理できたことで、自分でも改めて股関節の重要性を再認識しまして。上体と下肢の連結には、膝立ちのように連結そのものを習慣化することと、その連結を崩さないために股関節を使うことというのは、いわば表裏一体だな、と。

ちなみに、今回のような身体論・動作理論ともいえるものがが私の中で形を成していったのは、実はここ数年でのことです。それまでの体育理論や指導経験、自分のスポーツ経験の上に、授業後に一人黙々とキックボクシングや居合剣術の稽古を行っていく中での体感的・実感的発見、それらが混ぜ合わさってできたものです。

 

趣味としてだけでなく指導理論の研究の一環として始めた居合剣術が、こうしてその目的どおりの結果に結びついてきたことを、密かに超嬉しく&楽しく思ってたりしてます(笑)

 

誰もいない教室で一人刀を振り回す危ないオッサンの図(笑)

 

あと、座禅も「肩の力を抜いた状態」や「腰が入った状態」の姿勢作りには最適です。どの部活でもトレーニングの一つとしてやるべき、と思うくらいにお勧めです。座禅のやり方については以前youtubeにアップしましたので、そちらをご参照ください。


マンモスちゃんねる第12回 座禅のススメ&やり方

最後に。
実は今シリーズを書こうと思ったのは、父との他愛もない会話がキッカケでした。父が「最近、肩や腰が痛くてな…」と言ったときに私が何の気なしに「日頃から頭のてっぺんを上に向けるように心掛けるとケガしにくくなるよ」と答えたのがキッカケでした。

自分の口からふと出た言葉でしたが、何か妙にそれが引っかかってまして、その後もそれについて考えてました。以前から漠然とそれを捉えてはいたものの、きちんと整理して細かいところまでは考えてなかったな、と。指導や自分の稽古での体感的経験から感覚的には捉えて使ってはいたものの、これは改めてきちんと整理して考えてみるべき価値のあることなんじゃないか?と。

そうして一人のときに考え続けながら頭を整理し、それについて再認識・再発見していったことの中から、ガッツリ運動をするわけではない人にも日常的に役立ちそうなこと、なるべくわかりやすく伝えられそうなところを取り出して書いたのが、今シリーズだったりするわけです。だから、先にも述べたように肩甲骨とか仙骨みたいなマニアックな話は省いています。

あの父との何気ない会話がなかったら、このシリーズも、私の頭の中の整理と再発見もなかったわけで。そう考えると、たぶん大事なことって何か特別なことや難しいことの中から学んだり発見したりするのではなく、むしろいつでもあること、どこにでもあること、そうした日常の中にこそ見出せるものなんじゃないか、と。リンゴが落ちるのを見てニュートンが万有引力の法則を発見したように。

大切なことは日常の中にすでにある。特別な場所に行き、特別なことをしなくても、実は常に目の前にある。ただ、それに気づけるかどうかというだけで。今シリーズの話も特別な方法や場所、器具が必要なことではなく、日常の中でできることですからね。要は、そこに目を向けられるかどうか、なわけで。

さて、長くなりましたが、以上をもちまして今シリーズを終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ふぅ…。久々に頭フル回転させて書いたから、知恵熱出そう…。
何はともあれ、11月のテスト期間前に書き終えることができてホッとしました(笑)