今シリーズの第3回です。前回は「頭をてっぺんに向ける」ことにおける二つの重要なポイントがあり、その一つとして「首肩」について説明しました。今回はもう一つのポイント「腰」についてです。

腰も皆さんがよく痛めて辛い思いをする箇所ですが、そうなってしまうのは「曲げる」からです。と言うと、「え?だって腰って曲がる部分じゃん?曲げていいんでしょ?曲げなきゃ角度変えられないじゃん?」と思いますよね。

まず、腰の関節を見てください。

©MedicalNote, Inc. All Rights Reserved.

 

上の図の腰椎の部分が腰になります。要は背骨の延長なのですが、これ、前後に曲げるに適した構造してますかね?肘とか膝とかみたいに。腰=背骨というのは、確かに各部分間に隙間があることである程度は前後に曲げられる許容範囲を持ってはいますが、構造から見たら「前後に曲げる」ことに決して適している関節とは言えません。

同じ脊椎動物である魚類、両生類、爬虫類、鳥類、四足系哺乳類を考えた場合、特に魚類~爬虫類までを考えると、背骨は魚の泳ぎ方や蛇の進み方のようにクネクネと動かすのが基本で、鳥類や哺乳類も人間のように地面に垂直から平行へと腹側に90度も曲げるような動作はしません。

© ONE PUBLISHING

このように、背骨とは「たわむ」という動きが本来であって、大きく「曲げる」ものではないわけです。となると、背骨の延長かつ一部である腰(腰椎)も、本来は「曲げる」ものではない、ということになります。

ついでに付け加えると、背骨の役割とは構造上「たわむ」を可能にすることで折れないようにすることが第一の意義と考えられます。もし背骨が中が空洞(神経が通る)の一本の骨でできてたら、前後左右からの衝撃で簡単に折れてしまって神経損傷→体が動かず→野生なら死、となります。

 

つまり、背骨とは衝撃による体の負担や、中の神経を保護するために衝撃を吸収してダメージを減らすのが本来の仕事なわけで。それを動作用関節として本来の仕様と異なる仕事をさせれば不十分な働きしかできず、過負荷や不適切使用で壊れるのは当然なわけです。

でもそうなると、腰を曲げないと下にあるもの拾えないじゃん?腰を曲げないでどう拾うのよ?となりますよね。そこで「腰を曲げる」と同じ効果をもたらして、本来の動作目的を担う箇所が「股関節」です。

四足系哺乳類の骨格はもともと背骨と大腿骨(太ももの骨)が別角度で交わる構造になっています(①)。足が地面に垂直なのは人間と同じですが、体がもともと前傾・地面と平行なので。対して人間は二足歩行になることで背骨と大腿骨が基本一直線(同角度)ですが(②)、それが交わる股関節は今でも90度以上曲がります(③)。

 

② 

 

ということは、上体と下肢をその間で折り曲げて角度をつけるという動作に適した関節は、構造上、腰=背骨ではなく股関節だということになります。実際、股関節は球関節といって、肘や膝のように一方向にのみ曲がるのではなく、非常に広い可動域をもった作りになっています。

 

つまり、体を前に傾けようと思ったら「腰を曲げる」と意識するのではなく、「股関節を使って体を倒す」と意識して動作を行う方が、自然で理に適っているのです。

ということで、前回は「首肩」、今回は「腰」について、どちらも「曲げない」方が体の構造上、理に適っているということを説明しました。このことは、首肩や腰の関節(広義の背骨)を曲げない=「地面に垂直の状態を維持する」ということであり、それは前回の最後に少しだけお話しした「重力に逆らわない」ということに繋がるわけです。

重力に逆らって反発すれば体の負荷が大きくなるのは当たり前です。そして、重力に逆らわない「真っすぐな姿勢」を維持しようと思ったら、基本的に「頭のてっぺんを上に向け」ればいいわけです。頭のてっぺんが上に引っ張られるような感じで、背骨を潰さず、軽く伸ばして。

はい、これでようやく最初の「頭のてっぺんを上に向ける」ということに話が戻ってきたわけですが、今回話した「股関節」、これ、すごく重要なので、次回もう少しお話ししたいと思います。それが「頭のてっぺんを…」の効果としてのパフォーマンス向上についての具体的は話にもなるので。

予定としては、今回までで原理的なお話は済んだので、股関節とパフォーマンス向上の話をして、その後に「ケガ予防」「健康促進」「スタイル改善」の効果についても具体的な話をしていく予定です。

う~ん、あと2回で終わればいいけど、たぶんあと3~4回くらいになっちゃうんだろうなぁ…。久々に真面目なシリーズもの書いてるんで、本音を言うと頭が疲れてきてるんですよね…(苦笑) でもまぁ、11月になったらテスト月間に入って書く暇なくなってしまうので、なんとか10月中に仕上げます。

それでは、また。