さて、前回「頭のてっぺんを上に向ける」だけでケガ予防、健康促進、スタイル改善、パフォーマンス向上に繋がりますよ、と豪語したわけですが、今回はその理由について説明したいと思います。

人間の体はどこも重要であって本来無駄な部分などないのですが、部分によって割合の問題というか、全体への影響力の程度差はあります。そして、人間の体の構造とそれに基づく運動動作という観点から見たとき、人間の体には特に重要な二つのポイントがあります。それが下の画像の○で囲った部分です。


当教室の説明用人形「佐伯君5号」。人相悪いです(笑)

皆さんが慢性的によく痛くなってしんどいと思う箇所の代表格は、この「首・肩」と「腰」かと思います。つまり人体構造上、この部分に日常的に負荷がかかることが多いというわけですが、それだけ動かす頻度が高い=各動作の共通項になる部分というわけです。

え?そんなの当たり前でしょ?と思った方、そのとおりです。肩こり腰痛に関する薬は薬局でも売れ筋ですし、マッサージでもまずはそこの解消を願って来る人がほとんどです。

では、なぜここに負荷がかかりやすいのでしょう?なぜ全体への影響が大きいのでしょう?逆に、どうしたら負荷がかかりにくくなるのでしょう?それについて説明したいと思います。

まず「首・肩」についてですが、ここは体全体の姿勢(方向性)を司ります。後ろから声をかけられたら最初に顔(頭)が後ろを向き、それと連動する形で首から下の体も動きます。体を前を向いたまま顔だけ後ろを向いたらホラーです(笑) 人間の体とは顔(頭)の向いている方向に全体が向くようにできています。

また、手足や指の骨を折っても死にはしませんが、首の骨を折るとほぼ死にます。正確には首の骨を折ることで気道が潰れて呼吸ができなくなったり、頭と体を繋ぐ神経がダメージを負って伝達能力を失くすためなのですが、基本的には骨折と死が直結する骨なんてこの首の骨くらいのものです。首は脳と体を繋ぐ全神経の集中する箇所なので、それだけ重要であり弱点でもあります。

さて、慢性的に肩こりが多い人に、デスクワークの人が挙げられます。最近ではスマホの使い過ぎで肩こりになる人も多いみたいですが、原因は同じです。頭の向きと体の向きが一致していない体勢を取っている時間が多いため、それを繋ぐ首肩部分に負荷がかかっているのが原因です。


 

これを解消するには、常に頭(首)と体(背骨)の向きを一致させればいいわけです。人間は寝ているとき以外は通常、体は地面と垂直になっています。なので、「頭をてっぺんに向ける」ようにすれば頭と体の向き方向が一致し、首肩への負荷が減り、肩こりが起こりにくくなるわけです。

この「首肩への負担が減り」ということについてもう少し説明すると、頭と体、特に首と背骨の方向が一致していない(まっすぐでない)と、酸素の通り道である気道、食べ物の通り道である食道、神経の通り道である頸椎が圧迫されることになります。
 

それらが圧迫されることでたとえ完全に塞がってはいなくても通り道が狭くなれば、通り道の入り口と出口の双方で機能不全を起こすことは容易に想像できるでしょう。要は出入口や料金所で渋滞する高速道路の状態です。必要な酸素や血液、神経がスムーズに流れないわけです。

酸素や神経伝達が不十分になれば、当然そこに付随する筋肉も機能不全を起こします。ただでさえ頭という重いものを首という細い柱で支えているわけですから、柱はもちろんのこと、その土台である肩にも大きな負担がかかります。

 

本来「真上の頭を支える」のが首や肩の筋肉の仕事であって、「斜めになった頭を支える」のはオーバーワーク、超過労働なわけです。そりゃ首肩も「無理な仕事をさせるな~!労働条件を改善せよ~!」と声を上げる代わりに痛みで頭に訴えるわけですよ。

今、「本来、真上の頭を支えるのが首や肩の仕事」と言いましたが、これは「重力に逆らわない」ということです。つまり、「頭のてっぺんを上に向ける=重力に逆らわない」ことなわけです。ここ、重要ですよ~。あとでテストに出ますよ~(笑) 実際、次回以降も出てくるキーポイントなので、覚えておいてください。

とまぁ、首肩について書いていたら結構長くなってしまいましたので、腰については次回に回したいと思います。うん、やっぱ長くなるよねぇ(苦笑)