ヴァティカン宮殿 | ルビーのブログ

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早めに帰った宿で、違う部屋の鍵を渡された。
『もしかして一人部屋に替えてくれたのかも』と、
ちょっぴり期待して部屋へ行ってみると・・・

3台あるベットのひとつに私の着替えが置いてあり、
脇にはリュックがある。
『えっ?!また相部屋じゃない?!
前夜と同じ三人部屋なのに、何で移る必要があるの?!

「何で?」「毎日部屋が変わるの?」と受付の男性に聞いても、
「Idont’t know」(私は解らない)ばかり。
彼は前日に受付にいた人ではなかった。
恐らくアルバイトで、言われた通りにしているだけなのだろう。
彼と押し問答しても仕方ないにで、落胆しながら部屋に戻った。

途中、宿泊客の荷物を持つ宿のスタッフとすれ違った。
『私だけじゃなく、みんな毎日部屋が変わるの?』
『しかも、自分が留守の間に勝手に荷物まで移動されて?!』

結局この日は、日本人女性二人と同室になった。
彼女達は私が寝た後、夜遅くにに来て、

私は朝早くに起きたので、軽く挨拶する程度だった。

翌朝、体調が良くなったチエコさんに相談すると、
チエコさんも相部屋だが、部屋は替えられていないとのこと。
私に同情しつつ、年末の宿探しは大変だから、
もう少し様子をみて別の宿へ移る準備をしたほうがよいと
アドバイスして下さり、私はそうすることにした。

この日は前日のリベンジで、

バスでヴァティカン市国へ向かった。
前日利用した地下鉄とは違い、テルミニ駅から

64番のバスに乗ると、
サン・ピエトロ広場のほぼ目の前に到着した。
前日に行って場所は解っていたので、
迷わずヴァティカン宮殿の入口へ向かった。

まだ開館時間より少し前なのに、既に数人並んでいた。
が、前日のような長蛇の列ではなく時間もあるので、
『今日こそ中に入れる』と思うとワクワクした。

ヴァティカン宮殿は、法皇の住居、礼拝堂や広間、

彫刻像のある中庭、博物館、美術館、

絵画館、図書館などがある。
歴代の法皇が集めた人類の文化遺産ともいうべき
美術品のコレクションが収められている。

エジプト、古代ギリシャ、古代ローマ、エトルスク美術等の
テーマごとに部屋が分かれていて、それぞれの間に続く回廊も
地図やタピストリー等のギャラリーになっていて、
美術品の量はとてつもなく膨大だ。

私は何処を見ても、歩きながらも、

美術品の多さ、その素晴らしさに
「わぁー」「はーっ」と、感嘆の溜息をもらした。

有名なものばかりだが、特筆すべきは【ラファエロの間】
25歳の彼が37歳でこの世を去るまで描き続け、
彼の死後は、弟子達によって完成された部屋だ。

特に印象的だったのは【アテネの学堂】
額に入った聖母子像の作品が多い彼にしては大きな壁画だ。

中央の二人、左側のプラトンは理想主義で、
知識の源として天上世界を重視した為、天空を指さしている。
右側のアリストテレスは現実主義で、
地上の事象理解を重視した為、地に向けて手を広げている。

左前に座って頬づえをついているヘラクレイストは、
ミケランジェロがモデルとされている。
又、右下には自画像も描かれている。

ギリシャの哲学者達という少々お堅いテーマなのだが、
ちょっぴり遊び心があり、明るく淡い色彩で描かれているのが、
いかにもラファエロらしい作品だと思う。

そして忘れてならない、いや、

忘れられないのが【システィーナ礼拝堂】

左右の壁画も素晴らしいのだが、
どうしてもミケランジェロ作の

正面と天井画に目がいってしまう。

天井は「原罪と楽園追放」「ノアの洪水」等の
旧約聖書をもとにした場面が描かれている。

右側にいる神が左側の最初の人類であるアダムに
生命を吹き込む場面を描いた「アダムの創造」
お互いの指を近づけている描写が特に印象的だ。

1982年の映画「E・T」で、
少年と宇宙人が指先を触れ合わせる画像は、
スティーブン・スピルバーグ監督が、
この場面からインスピレーションを受けたといわれている。

見ているだけで首が痛くなってしまうこの作品を手がけた
ミケランジェロは、膝に水が溜まり、背中が猫の様に
曲がってしまったというのも無理はない。

こんな大仕事を終えただけでも凄いのに、
彼はその後、更なる偉業を成し遂げる。

それは、システィーナ礼拝堂の正面を飾る【最後の審判】
中央にはマリアと聖人達を従えたキリストが審判している。
右側には選ばれた人々が、ゆっくりと天国へ上昇してゆく。
左側の罪深い人々は、下の地獄へと落ちていく。

65歳を過ぎてから制作したとは思えないくらい、
力強くダイナミックな作品だ。

『私はどちらにいくのだろう・・・』
この壁画の前に立つと、
誰もがそう思わされてしまうのではないだろうか・・・

礼拝堂なので本来は静かにしなくてはならないのだが、
あまりの素晴らしさに見学者達が思いを

同伴者と小声で話しだす。
当人たちはヒソヒソ声で話しているつもりでも、
大勢の人達が同じようにするので、次第にザワザワとなる。
天井の高い礼拝堂は声が響くので更に大きく聞こえる。
係の人が「お静かに」「シーッ」と言うと、「シ~ン」となる。
が、しばらすくると

ザワザワとなり「シーッ」と、この繰り返し。

私とチエコさんは殆ど話さず黙って見学した。
「シ~ン」となった時、周囲の大作に囲まれ
静寂な空気に包まれた礼拝堂が忘れられない・・・・・