令和4年5月18日、第13回成年後見制度利用促進専門家会議が開催されました。
この会議において、最高裁判所が成年後見制度の利用の促進に関する取組状況等について報告しました。
その中で、「後見人等による不正について」という平成23年から令和3年までの不正の件数、被害額のデータの報告がありました。
資料⇒コチラ
平成26年
不正の件数 831件(専門職22件、専門職以外809件)
被害額 56億7000万円(専門職5億6000万円、専門職以外51億1000万円)
令和3年
不正の件数 169件(専門職9件、専門職以外160件)
被害額 5億3000万円(専門職7000万円、専門職以外4億6000万円)
平成26年をピークに不正の件数・被害額はいずれも減少を続けています。
令和3年は、平成26年に比べて、件数にして約5分の1、被害額にして約10分の1になっています。
状況は大きく改善したと言えます。
その理由として、最高裁判所は「親族後見人に対するガイダンスや後見制度支援信託・預貯金の活用など不正防止に向けた裁判所の一連の取組が一定の効果を上げていると考えられる」と分析していますが、そのとおりだと思います。
また、1件平均の被害額は、平成26年の約682万円であるのに対し、令和3年は約314万円で、2分の1以下になっています。
後見制度支援信託・預貯金や後見監督人選任によっては防げない、少額の横領事件をどう防ぐかが今後の課題と言えるでしょう。
後見人等による不正は、1件でもあれば、制度に対する信頼を大きく損ないます。
制度への信頼を確保するためには、不正事件の予防はもちろんのこと、不正事件が起こった場合の損害を補償する制度も必要になると思います。
民間の補償制度として、弁護士成年後見人信用保証事業(⇒コチラ)や、成年後見センター・リーガルサポートの「身元信用保険契約」(後見人等候補者名簿登載会員の不誠実行為(横領等)による損害の補償)に代替する交付金の制度があります(⇒コチラ)が、いずれも損害額全額を補償する制度ではありません。
第二期成年後見制度利用促進基本計画においても、不正防止の徹底と利用しやすさの調和が制度の運用改善のテーマの一つになっています。
安心して成年後見制度を利用できるようにするためには、さらなる運用改善が求められると言えるでしょう。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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