令和4年4月18日、日本記者クラブにおいて、山野目章夫・早稲田大学大学院教授が「成年後見制度改革の必要とその方向性」について会見を行いました。
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成年後見制度利用促進専門家会議で議論を重ねる中で、現行の成年後見制度の問題点・改善点が浮き彫りとなりました。
令和4年3月25日に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画においても、今後、成年後見制度等の見直しに向けた検討を行うとされています。
この第二期計画に記載されている「(専門家会議における)制度改正の方向性に関する指摘」は、以下のとおりです。
① 成年後見制度については、他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・ 補充性の考慮)
②三類型を一元化すべき
③終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき
④本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべき
山野目教授は、専門家会議の委員でもありますので、この時期に山野目教授が会見をしたということは、今後成年後見制度の見直しの検討を行うということと、その方向性について、広く世間に知らしめ、見直しの機運を醸成するという意図があったと思われます。
制度改正の方向性としては、「硬直的な制度から柔軟な制度へ」ということが言えると思います。
この会見の冒頭で、司会の時事通信の小林伸年さんが、現行制度について「硬直的で評判の悪い制度」と端的に表現しています。
山野目教授は、制度改革の方向性について、以下のとおり説明しています。
①民事の法律制度の改革
・期間…を限った制度の検討
・事項を限った制度の検討
②社会福祉の改革
・家族や本人が使いやすい仕組みを作る
・民間事業者の参入で新たな担い手を
成年後見制度を利用しない他の支援の仕組みを作り、成年後見制度は適切な時機に必要な範囲・期間で柔軟に利用できるようにするということになります。
2025年には団塊の世代がみな後期高齢者となり、認知症患者が約700万人(厚労省推計)になると見込まれていますが、あと3年しかないんですよね。
山野目教授は、「いくら遅くても、2030年の前には民法の改正が望まれる」としています。
第二期計画の5年間にいかに改革を推進できるかが、ポイントになるでしょう。
山野目教授が提言する社会福祉の改革は、成年後見制度の利用者に限定されない大きな視野からの提言であり、とても興味深い内容となっています。
成年後見実務に携わる方はもちろんのこと、幅広い人に共有してもらいたいと思います。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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