成年被後見人であっても、市町村において印鑑登録ができるようになりました。
印鑑登録は、市町村の自治事務とされており、各市町村は、総務省の「印鑑登録証明事務処理要領」に沿った形で印鑑条例を制定し、印鑑登録事務を行っています(⇒コチラ)。
この「印鑑登録証明事務処理要領」の改正に伴い、各市町村は、成年被後見人であっても印鑑登録ができるように印鑑条例を改正しています(全部の市町村が改正したかは不明ですが)。
「印鑑登録証明事務における成年被後見人の欠格条項の見直し」(総務省)⇒コチラ
その経緯については、「大阪市印鑑登録事務取扱要領」(⇒コチラ)にも詳しく書かれていますので、以下引用します。
「令和元年6月14日付けで、成年被後見人及び被保佐人の人権が尊重され、成年被後見人又は被保佐人であることを理由に不当に差別されないよう、資格や営業許可等の各制度において定められている成年被後見人又は被保佐人に係る欠格条項その他の権利の制限に係る措置の適正化等を図ることを目的とした、成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号)及び成年後見制度利用促進基本計画(平成29年3月24日閣議決定)に基づく「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「一括整備法」という)が公布され、成年後見制度を利用していることを理由として資格・職種・業務等から一律に排除するのではなく、それぞれの資格・職種・業務等にふさわしい能力の有無を個別的・実質的に審査し、判断することとされた。 一括整備法を踏まえた同年11月19日付で発出された印鑑事務処理要領の一部を改正する通知において、「成年被後見人」は「意思能力を有しない者」に改められた。また、意思能力を有しない者は印鑑の登録は受け付けられないが、成年被後見人から印鑑の登録の申請又は印鑑登録の廃止の申請を受けた場合において、法定代理人が同行しており、かつ当該成年被後見人本人による申請があるときは、当該成年被後見人は意思能力を有するものとして、これらの申請を受け付けることとして差し支えないとの見解が示された。 なお、後見開始の審判の通知を受けた者の印鑑登録は、民法第7条の趣旨に基き、条例第13条第7号の規定により消除を行う。」
長いので、要約すると、
①印鑑登録をすることができないとされていた「成年被後見人」を「意思能力を有しない者」に変更する。
②後見開始の審判の通知を受けた者の印鑑登録は、従来どおり職権消除する。
ということになります。
つまり、成年被後見人だからといって、一律に印鑑登録ができないというのではなく、意思能力があるかどうかを個別に判断して意思能力のある者には印鑑登録を認めるということです。
そのため、後見開始の審判の通知を受けた者の印鑑登録は、いったん職権消除し、成年被後見人が新たに申請する際に、個別に意思能力の有無を判断するということになります。
では、どのように個別に判断するのでしょうか。
「大阪市印鑑登録事務取扱要領」に「成年被後見人の申請」として以下のとおり定められています。
「成年被後見人の印鑑登録申請は、成年被後見人本人が、法定代理人を伴って来庁し、 申請を行う場合に「意思能力を有する者」からの印鑑登録申請として取り扱う。
成年被後見人単独の申請や、法定代理人による申請、任意代理人による申請を行うことはできない。」
成年被後見人が印鑑登録を望む場合は、成年後見人としては、本人の申請に同行するということになります。
もっとも、成年被後見人が印鑑証明書を使う場面はあまり想定できませんし、印鑑カードの紛失等の危険性もありますので、成年後見人は、印鑑登録にあたっては成年被後見人の意思を十分に確認するとともに、印鑑カードの管理には注意する必要があるでしょう。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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