映画「ゆうやけ子どもクラブ!」と意思決定支援 | 成年後見日記

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昨年末に映画「ゆうやけ子どもクラブ!」を横浜の映画館ジャック&ベティに観に行きました。

 

映画「ゆうやけ子どもクラブ!」公式サイト→コチラ

 

 

この映画は、東京都小平市に1978年からある障害のある子どもの放課後活動の場「ゆうやけ子どもクラブ」で過ごす子ども達、職員、保護者に密着したドキュメンタリー映画(井出洋子監督)です。

 

今でこそ、「放課後等デイサービス」という制度があり、障害のある子どもの放課後活動の場が広まっていますが、約40年前からある「ゆうやけ子どもクラブ」はその草分け的存在だそうです。

 

私がこの映画を観ようと思ったのは、私自身知的障害のある方の成年後見人をしており、職員の方たちが知的障害のある子どもとどのように意思を通わせているのか知りたかったためです。

 

現在、成年後見の分野では、「意思決定支援」の重要性が盛んに言われています。

 

障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(→コチラによると、

「意思決定支援」とは、「自ら意思を決定することに困難を抱える障害者 が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができ るように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、 本人の意思の確認や意思及び選好を推定 」することを言います。

 

「本人の意思及び選好の推定」といいますが、重度の知的障害の方の意思や選好をどのように推定すればいいのでしょうか。

 

この映画のあるシーンがとても印象的でした。

 

「ゆうやけ子どもクラブ」では、子ども一人ひとりの活動記録を毎日書いています。

ある日の職員研修会において、5人の職員がある子どもの3年分の記録をさかのぼり、気になる行動を抜き書きし、皆で話合いながら、記録に残る子どもの行動や言葉から子どもの気持ちを読み取ろうとします。

井出監督は、このシーンを「まるで探偵が解けない謎を解きほぐしているようだ」と表現しています。

 

私は、このシーンを観ながら、意思決定支援ガイドラインの次の一節を思い出していました。

 

「本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、本人をよく知る関係者が集まって、本人の日常生活の場面や事業者のサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録などの情報に加え、これまでの生活史 、人間関係等様々な情報を把握 し、根拠を明確にしながら障害者の意思及び選好を推定する。」

 

このシーンのような丁寧で地道な作業の果てに、「本人の意思及び選好の推定」というのが可能になるんですね。

なんと時間がかかり、大変な作業なのでしょう。

 

この大変な作業の原動力は、やはり「子どもに対する愛情」「子どもをわかりたいと思う気持ち」なのだろうと思います。

 

この映画を観て、「意思決定支援」という言葉は、このような大変さを引き受ける覚悟を持って使わなければならず、決して安易な気持ちで使ってはいけないと感じました。

 

 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
 

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