LIBRA 2019年6月号「成年後見実務の運用と諸問題」 | 成年後見日記

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東京弁護士会の会報「LIBRA」の2019年6月号に東京三弁護士会主催の研修会「成年後見実務の運用と諸問題」についての記事が掲載されています。⇒コチラ

 

この研修会は、東京三弁護士会が、平成30 年12 月18 日、東京家庭裁判所後見センターの浅岡千香子裁判官、小西俊輔裁判官、島田壮一郎裁判官を招いて行った研修会です。

 

この研修会は、事前に質問を募ってそれに対して裁判官が回答をしていますので、実務的に気になる事柄を扱っていて、かなり充実した内容です。

 

今回参考になったのは、次の3点です。

 

①死後事務委任契約の締結の可否について

②入所施設から退去する場合における居住用不動産の処分許可の要否

③後見人報酬の支払を受けるための預貯金払戻しの可否

 

①については、本人に推定相続人がいない場合、後見人が本人の存命中に第三者と死後事務委任契約(葬儀・供養・墓じまい等)を締結しておくことができれば、後見人が権限もないのに死後事務を事実上行うことを避けることができます。

 

これについて、裁判官は、「被後見人本人が希望している 場合や元気だったころの発言などから,そのような希望があると推測される場合に,後見人がこれらの契約を締結することは管理財産額や他に優先すべき課題があるかといった点も含めて考慮した上での後見人の裁量判断に委ねられると考えられる。」と回答しています。

 

専門職後見人の場合、本人に身寄りがないケースを扱う場合が少なくありませんので、そういった場合は、死後事務委任契約の締結は一考に値すると思います。

 

②は、高齢者住宅などで賃貸借契約を締結しているケースで、施設を退去する場合に賃貸借契約の解約として居住用不動産の処分許可が必要かどうかということです。

 

これについて、裁判官は、「目安を挙げると,高齢者住宅に関して賃貸借契約の形式をとり,かつ住民票上の住所もその施設に移転 している場合には,民間賃貸との差を本人が意識せずに契約,居住している可能性が否定できず,原則的には居住用不動産処分許可を求めることが望ましいと思われる。」と回答しています。

 

民間のアパートの賃貸借契約の解約の際に許可が必要なのは明らかですが、高齢者住宅では「施設」というイメージが強いので、うっかり許可の要否について検討をしないで退去してしまう可能性もあります。

入居時の契約書を確認し、迷ったら事前に連絡票で裁判所に確認した方がよさそうですね。

 

③の報酬を受領するための預貯金の払戻しの可否については、専門職後見人としては気になるところです。

 

これについて、裁判官は、「本人死亡後,相続人等に本人財産を引き継ぐ前の時点については,預貯金口座が凍結されているか否かによって,執り得る手段は異なると思われる。本人死亡後であっても, 預貯金口座が凍結されておらず,元後見人において払戻しが可能であれば,応急処分ないしは事務管理として,払戻しを行った上で報酬を回収することがあり得るものと思われる。預貯金口座が凍結されて いる場合は,報酬の支払を受けるための預貯金の払戻許可を受ける方法が考えられる。」と回答しています。

 

応急処分ないし事務管理による払戻しとはいうものの、相続人がいる場合は相続人の同意を得てから払戻しをした方が紛争予防の観点から望ましいですよね(この回答の前提は、相続人の同意が見込めないケースと思われます。)。

また、払戻を許可するかどうかは、「相続財産の保存に必要な行為」といえるか否か(民法873条の2第 3号に掲げられている要件の該当性)がポイントであるようです。

 

この記事においては、以上の3点以外にも後見実務において疑問に思う事柄について、裁判官の見解が示されています。

 

後見実務に携わる方には必読の記事ですね。

 

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(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)

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