昨日(平成28年10月28日)、テレビ朝日のスーパーJチャンネルで~成年後見人の光と影~という特集が放送されました。
テーマはずばり「親族の専門職後見人に対する不満」です。
2つのケースが紹介されました。
今日は2つ目のケースについてです。
2つ目のケースは「親族と後見人の相互不信」です。
【事件の経緯】
①被後見人は福島県の90代の女性で、娘と20年間一緒に暮らしてきたが、震災前に認知症になり、震災で家に住めなくなり施設に入所した。東京電力から新居購入のための補償金が出るというので不動産登記手続をするために後見開始申立てをしたところ、弁護士が後見人に選任された。
②後見人は母をちらっと見ただけ。連絡しても「忙しい、忙しい」と言ってなかなか会ってくれない。
③後見人が選任されてから4か月後にやっと新居を購入できた。
④娘が施設にいる母を新居に移したいと後見人に手紙を出したら、後見人に「娘が母の財産と自分の財産を厳格に区分けするという意識が乏しく、母の財産が娘のために使用されるおそれがある」「1000万円の使途不明金の内訳が明らかになるまで新居への引っ越しは許可できない」との返事があった。
⑤「母の後見人から送金される母の生活費については、私の財産とは区別して管理し、あくまで母の生活費として使用します。」という「誓約書」を娘が書くこと条件に母を新居に移すことに後見人が同意した。
⑥その間に母の具合が悪くなり、入院したため、新居に移れなくなった。
このケースも1つ目のケースと同じで、専門職後見人が、被後見人の「財産」ばかりを見て、「被後見人自身」を見ていないという印象を受けました。
つまり、被後見人にとって何が一番幸せかということです。
普通に考えれば、90歳の高齢の母にとっては、震災で離ればなれになった娘と一緒に自宅で暮らすことがやはり一番の希望だったのではないでしょうか。
もっとも、このケースでは後見人の弁護士は出演しておらず、娘の視点でのみ語られていますので、後見人の弁護士の話も聞いてみたかったと思います。
このケースも一つ目のケースと同様で、家族の家計に第三者である後見人が介入していく難しさを感じました。
同居している家族の家計から被後見人個人の財産をスパッと切り取って第三者が管理していくというのはそもそも無理がありますよね…。
ただ、親族による経済的虐待・搾取から被後見人の財産を守るというのは後見人の役割でもあります。
特に、被後見人にその親族以外の相続人がいる場合に、後見人がその親族の経済的搾取を見過ごしてしまうと、後で後見人が相続人から訴えられることにもなりかねません。
また、親族による使途不明金については、裁判所から後見人に対して調査するよう指示がでている可能性もあります。
もっとも、同居家族の通常の扶養の範囲内なのか、それとも経済的虐待・搾取なのかの見極めは、後見人が被後見人とその家族についてよく知ろうと努めなければ難しいのではないでしょうか。
田山輝明教授の「見守りが前提で、本人の体調の変化とかニーズの変化とかそういうことが理解できなければ財産管理はできない」というお話は本当にその通りだと思いました。
この特集は~成年後見人の光と影~という題名でしたが、「影」ばかりにスポットがあてられ、「光」の部分に触れられていないのが残念でした。
私も少し前にこの番組の方からお電話いただいて、「多くの後見人はまじめに一生懸命やっているということをわかってほしい」という趣旨のことを言ってはみたのですが…
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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